”「益」する青い鳥はすぐ近く”
高血圧と鼻炎で当院に月に1回通院されている方。
いつも、仕事が忙しくてストレスを抱えている。
大企業の中間管理職は上下に挟まれてストレスが多いといつもいっておられる。
最近は、企業全体の業績が振るわず組織改革があったので、順調に機能するまで軋轢が多いという。
今回も、疲れた顔で、眉間にすこしシワを寄せて、診察室に入ってこられた。
いつものことなので、すぐに横になってもらい診察する。
足はむくんで内熱がある。肝経の緊張もある。
腹は、張ってやや食べ過ぎになっている。
ストレスがあると食べすぎるといつもおっしゃる。
胸脇苦満も両脇の奥の方に感じる。
首がおもくて、目もシンドイ。
頭も考えることが多いのか重たい。
全体的に気の流れがわるく、気を流そうとしてもながれない。
いつもより、ストレス状況が悪化しているのだろうか?
すこし気になってきた。
そこで、起きてもらい座ってもらってPTM易をやってみた。
「今の問題点は?」ということで問を立てると「天水訟」と「沢風大過」が反応。
「天水訟」は争い、訴えで、典型的には「訴訟」だから、ひょっとして
「何か訴訟にかかわっていますか?」と聞いてみた。
でも答えは「ない」とのことで、訴訟までの重大な訴えでない。
でも小さいところでは、「訟」は、”要求、苦情、文句の訴え”、でもある。
また「沢風大過」は”多過ぎる”を意味する。
そこで「苦情とか文句は、そういうことが多くありませんか?」と聞いてみた。
すると「そればかりなんですよ。」「上からも下からも、文句がばかりで、やってられませんよ。」とおっしゃる。
ここで「天水訟」の卦を下から上に指で辿ってみた。すると初爻の下で反応する。
たぶん、部下からの訴えが特に多いのだろう、と予測する。
さて、どうするか?状況はわかったのだが、それでは解決にはならない。
そこで、あまりしないことだが、易に「どうしたらいいか?」と、方針を聞いてみた。
すると、「天火同人4爻」と「風雷益4爻」が反応した。
職場が問題となっているので、「天火同人」は同僚と解せられる。
ここで出た4爻は直属の上司だろう。
”内卦は自分で、外卦は相手”とみるのが易の常法なので、外卦の一番下の4爻は直属の上司ととれる。
また「風雷益」は、利益、有益、役に立つという意味がある。特に、「彖伝」に「益は上を損して下に益す。民説ぶこと疆无し。」とあるように、”上を犠牲にしても下を益する”と「吉」だという含みがある。
すると、直属の上司(4爻)が苦労を被っても、この方(内卦)を助け益してくれる可能性がある。
だから、アドバイスとしては「直属の上司に頼ってみてください。たぶん、自分が損しても、下からの苦情をさばいてなんとか助けてくれますよ」となった。
これで、患者さんの、ボヤキがすこしやわらいだ。
漢方は、疲れとストレスに対応できる「補中益気湯」をPTMで選んで、今回は終了とした。
コメント
●「風雷益」は、利益、収益、有益、役立つ、などの意味がある。反対の「山沢損」にくらべて臨床では出にくい。クリニカル易占ではネガティブなことを扱うことが多いので当然といえば当然だ。職員はアクセクしているのに「会社が儲かっている」とかいう意味で出たことがある。
●「天水訟」は、訴え、苦情、要求、言い争い、などで出ることがある。臨床では、患者さんが「遺産相続もんだいで争っている」ときによく出る。また、「仕事上の苦情、要求を上司に訴えたい」時にも出る。今回、「天水訟初爻」の下でPTMが反応したので、「部下からの訴え」と解釈した。以前にも、「風火家人初爻」の下で反応した時に「地下に眠っている家人」と解釈したのと同様のやり方だ。興味のある方は、「風火家人」の投稿を見てください。
●「沢風大過」と「天火同人」については以前にアップしています。