解、利西南无所往、其來復吉有攸往夙吉。
解は、西南に利ろし。往く所无ければ、其れ来り復って吉。往く攸有れば、夙くして吉。
かいは、せいなんによろし。ゆくところなければ、それきたりかえってきち。ゆくところあれば、はやくしてきち。
”解毒、分解はからだの要”
2年ぶりの来院となる。
今回は、便が出にくい、でると下痢になるという主訴で来られた。
腹は時々いたむ。
内科で薬が出たが効かないらしい。
腰痛もあり、整形にも通っている。こちらもスッキリとは治らない。
奥さんの紹介で来られた。
早速横になってもらって診ることにした。
足は脾経にむくみがる、流れが悪い。
消化能力の問題がありそうだ。
腹は膨満気味、右の肝臓の当たりは張っている。
脂肪肝だろう。奥に熱も感じる。
胃もはっている、たくさん食べている胃だ。
簡単に言うと「食べすぎ」の腹をしている。
タバコのニオイもする。
食べ過ぎに加えてタバコも結構すっているのだろう。
そこで聞いてみた。
「食べすぎじゃないですか?」
「食べるのは少し多いくらいかな。でも酒を沢山のみます。」
「どのくらい?」
「ビールを5-7本程度。」(2Lも毎日飲んでいるのだ!)
「肝臓が腫れていますよ」
「そうですか。健康診断では肝臓の数値がいつも高い」
「タバコも吸っていませんか?何本ぐらい?」
「2箱なので40本程度」
ビール2Lでタバコ40本なら、便の調子が悪くなっても変ではない。
呼吸器の症状もでてもあたりまえだ。
「ビールもタバコも多くないですか?」
「そうですか?友達も同じですけど」
重症度、危険度をご本人は理解していない。
やめろと言ってもやめそうにない。今の状態が普通と思っている。
そこで、起きてもらって、PTM易で「問題点は?」と聞いてみた。
すると「雷水解5爻」が反応した。
「雷水解」は、解散、解決、解放、分解、溶解、解消、などの意味がある。
そこで聞いてみた。
「周りに、解散とか解放とか、解けたような物や出来事はないですか?」
「ないな、、、」
「それじゃ、解決したとか、解消したとか、人や物や組織でないですか?」
「ないかな、、、」
「別れたとか、離れたとか、緩んだとか、ないですか?」
「ないよな、、、」
手応えがないので、どうしようかと思った時に、患者さんが。
「これ、”分解”出来ないことじゃない?食べたものが。」と言ってくれた。「そうです、そうそう、その通り。分解できないから下痢になる。」
なんと、今回は患者さんが正しい方向に解釈してくれた。
その通り。食べすぎて、胃腸に負担をかけて、胃腸が食物を十分に分解できてない、だから便秘になったり下痢になったりしている。
患者さんが正しい答えを自ら解釈してくれるのはあまりない。
それでは、「雷水解5爻」の「5爻」はどう解釈するのか?
5爻は、上爻(6爻)を頭とすると胸を表す。ちなみに腹は4爻だ。
腹が問題なら4爻がでてもいい、でも5爻なのだ。
これは、おそらく吸ったタバコが肺で分解できていないことを示唆するのだろう。タバコが少量だと身体が解毒するのでタバコの匂いはわからない。
でも、この方は、タバコの匂いがプンプン臭う。
多分、身体にとっては「食べ物の”分解”」より「タバコの”解毒”」の方が問題となっているように思える。
「タバコも分解できてないよ。へらしたらどうですか?」
「分解か、、分解とでたものね、やっぱり食べすぎで吸いすぎなんかな」「そうですよね」
「減らしてみるか」
なんだか、患者さんが自ら解答をみつけて、正しい方向に行きそうだった。
漢方は、PTMで下痢に対する「啓脾湯」と疲れにたいする「当帰建中湯」を選んで、今回は終了とした。
コメント
●「雷水解」は、解散、解決、解放、分解、溶解、解消、などの意味がある。以前の臨床では「離婚の可能性があるとき」、「自己観念と現実の自分の解離」などで出たことがある。それほど多くはでない卦だ。
●患者さんが自分で卦を解釈して正しい方向に向かうことはあまりない。自分で卦の意味がわかると、いままで気づかなかった自分の問題点に気づいてくれる。それが励みになって、正しい方向に進むことができる。これはクリニカル易占の面白い点だ。人に言われて行動を修正するより、自分で悟って行動をかえるほうが治りやすい。このあたりもカウンセリングに似ていないだろうか。
●「啓脾湯」は消化力が低下して、食べたものがそのまま下痢になるような人に使う漢方だ。