”合格は歩いてこない、二歩下がったら三歩進め”
母親が当院に来てくれている方。
今回は、母の紹介で、寝ても疲れが取れないと言って来られた。
高校3年なので受験をひかえている。
だから当然疲労があってもおかしくない。
早速、横になってもらい、診察する。
足は冷えている。身長はあるがそれほど頑丈な人ではない。
腹は腹直筋の緊張が少しある。
触れるとくすぐり感があり、すこし過敏だ。
胃腸もそれほど強くなさそうだ
気の流れは取れるが、でもアストラル体のあたりで停滞がある。
どうしてか?
受験前でストレスがあるのは当然だからと思うが、少し気になる。
起きて座ってもらってPTM易をやってみた。
聞いたのは「気の流れが悪い問題点は?」とした。
すると、「水天需」、「水山蹇」、「水火既済」が反応した。
「水天需」は通常は”待つ”ことを意味するが、以前、「夏休みの宿題を先延ばしにしてしまい、学校が始まる直前になってもできていない小学生に」、出たことがある。
だから、この人の場合も、なにか先延ばしにしていないかどうか聞いてみた。
「何か、やらないといけないこととか先延ばしにしてない?」
「そんなの、ないけど。。。」
「でも、宿題とか、勉強とか、手続きとか、後回しになってないかな?」
「そういえば、予備校の課題をやらずにそのままになっている。」
「やらなくていいの?」
「そういうわけでないけど、推薦で受かると思っているし。。。」
ああ、そうか、推薦で入試は通ると思っているだ。
だから「水火既済」がでたのだろう。この卦は”完成”を意味する。
本人は合格するための準備は”済んだ、整った”と思っている。
でも、本当にそうだろうか?
もし、準備万端に整っているのなら「水山蹇」は出ないだろう。
「水山蹇」は、”足踏み、停滞”を意味するので、凶意を持つ。
もし本当に受かるのが確実ならば「水天需」と「水火既済」の2つのみが出て、
まさに『果報は寝て待て』の状態になっているはず。
でも、なにか違う。
「推薦といっても難しいんじゃない?」
「うん、論文もあるし、口頭試問もあるし。。。」
「ひょっとして、それの準備がおくれてない?」
「うん。。。。」
ということで、すべてが了解できた。
推薦入試のための勉強が遅れているのだ。
受ける大学は難関大学なので、安閑としておれない。
ところが、ご本人はいまのままで受かると思っている。
しかし、実際は「水山蹇」が示すように、”足踏み状態、困難に直面した状態”にあるのだ。
そこで、アドバイスは「予備校の、推薦入試のための課題や準備に早く取り掛かろう」となった。
お母さんも診察室にいたので、この話を納得してくれたようだった。
漢方は、PTMで疲れにきく黄耆建中湯を処方して、今日は終了とした。
コメント
●「水山蹇」は、足踏み状態、困難のために進めない、足が萎えてしまっている、停滞、などの悪い意味がある。四大難卦の一つだ。イメージ的には「艮山」の上に「坎水」がのった”厳しい冬山”のような感じを私は持つ。立ち往生すると命が危なくなる。かつて、臨床では「労働状態を労働基準監督署に訴えよう」としていた人に出たことがある。
●「水天需」は、待つこと、飲食、潤すこと、などを意味する。以前の症例で書いたので見てください。
●「水火既済」は、整っている、完成した、済んだ、ことを意味する。各爻にそれぞれにマッチした陰陽が配置されているから見た目がきれい。つまり”収まるところにきちんと収まった”イメージがある。でも、きちんとしすぎてこれ以上発展がないと見られるケースが多い。受験に関して言うなら、簡単なところは受かるだろうが、難関大学は無理とおもわれる。