”若者は「恒」より変化を求む”
お母さんが当院に通われている方。
2週間前から風邪を引いたと言ってこられた。
当院は2年ぶり。
症状は、鼻がでる、微熱があったりなかったりで、頭痛がある。
とくに風邪に特徴てきな症状でもない。
見るからに、雰囲気が暗く、イライラしているよう思える。
何かわからないので、横になってもらって診察した。
足は、足先に冷えがある。
またスネの当たりに肝経から胃経にかけての緊張がある。
痩せている。筋が張っている感じだ。
腹は、腹直筋の緊張がある。
胃の流れが良くない。
自律神経の緊張を疑わせる所見だ。
全体の気の流れを見ると、停滞がある。
全体的に重たい。
頭が重いのは、ストレスがあるからだろうか?
「なにかストレスはありますか?」と聞いてみた。
「ありますよ、仕事が忙しいし。」と答える。
「仕事が多くて、ストレス?」
「それもあるし、雰囲気が悪くて」。人間関係が問題なのか?
「同僚ですか、上司ですか、それとも部下ですか?」
「同僚かな。。。」
「そんな、ストレスはいつから?」
「4月に転勤したんで、学校をかわった。」そこで、学校の先生だとわかった。
「そうか、合わない学校に変わったんですね?」
「そうですね。良くない。」とおっしゃる。
「生徒の雰囲気がわるい?」
「生徒はいいんです。周りの雰囲気がわるい。自分にあわない。」と言う。
そこで起きて座ってもらってPTM易で「学校の何が問題か?」を聞いてみた。すると、「天火同人」、「雷風恒」、「雷火豊」が反応。
「天火同人」は、患者さんは”同僚”が問題といっているので、それを意味するのは明らかだ。
「雷風恒」はあまり出ない卦でよくわからない。”恒常、一定、不変”とかを意味する。”不変”の何が問題なのか?
「雷火豊」は、比較的よく出る卦だ。”豊か、豊富、賑やか、活発、うるさい”などを意味するので、こちらから聞いてみた。
「まわりの、同僚がうるさいことないですか?」
「全然。みんな暗くて、シーンとして。僕が明るくしようとして、無理に賑やかに振る舞っている。」と答えた。
なんと、「雷火豊」はこの患者さんだった。
すると、「雷風恒」は何か?今までの話では、同僚の先生方または学校の体制を意味するように思える。
多分、体制が”不変一定”のままで、雰囲気が単調で暗くなってしまっているのだろう。変化が全くないような沈滞した状態をイメージした。そのような学校は、この患者さんのような若い人には苦痛に感じるのだろう。ここでは「恒」のマイナスの意味が見て取れた。
易では「恒」において「夫婦和合の恒常性の徳」を説く。
でも、このような徳は、結婚もしていない、若い人にとっては無縁といえる。
「変化がなくて、活気がなくて、暗くて、ストレスを強く感じるんですね?」
「そうなんです」
「恒」がでたんで、ここは、しばらく待たないと仕方ないかもしれない。
しばらく我慢するように患者さんに言った。
漢方は、患者さんのイライラに対して「抑肝散加陳皮半夏」を、冷えにたいして「桂枝加朮附湯」を処方して、今回は終了とした。
コメント
●「雷風恒」は、恒常、恒久、不変、一定、などを意味する。それほど臨床では出ない卦だ。この症例では「恒」が強調されて問題となっていた。
以前「仕事に変化があって適応できない」状況で出たことがある。この場合は「恒」の反対の「変化」が問題となっていた。
卦の意味を現実に当てはめて解釈する時、その意味が「強調」されるのか、「低減」されるのか、「反対」の意味になるのか、「誰に」その意味を当てはめるのか、などを常に考える必要がある。
●「天火同人」は、同僚、仲間、同級生、知り合い、などを意味する。
●「雷火豊」は、豊か、豊富、豊作、金持ち、賑やか、甘い物、などを意味する。臨床的には、「甘いものの食べすぎ」で出ることが多い。