”沢山の「咸」が減れば更年期”
体調不良があると時々来院してくれる方。
今回は、身体が重くて、肩こりがきつく、寝付きが悪く、やる気が出ない、などの症状で来られた。
内科の問題はない。他に薬を飲んでいるわけもない。
喋り方も少しおもたい。
ストレスはあるかと聞いたら、普通程度とおっしゃる。
問診でははっきりしないので、早速横になってもらって、診察した。
足はむくんでいる。疲れもあるように感じる。
気の停滞がある。流れが悪い。
腹は、ボテッとした感じで力がない。食べ過ぎの腹だ、それもお菓子が多い。
「お菓子を食べてませんか?」と聞くと、たくさん食べて3kg太ったと言う。
喉の通りもわるい、つまるかんじがある。
頭もおもたい。
全体の気の流れも、停滞して澱んですっきりしない。
肉体から、エーテル体、ずっと上のレベルまでみても、特に引っかかっているものがないので、何が原因かわからない。
手がかりがないので、しかたない、起きてもらった。
そこで座ってもらいPTM易をおこなった。
「気の流れのわるい原因は?」と聞いてみた。
すると、「沢山咸」、「天雷无妄」、「雷火豊」、「雷山小過」が反応した。
「雷火豊」と「雷山小過」がでたら、お菓子の食べすぎのことが多いので、コレは患者さんの話と合う。
それでは「天雷无妄」と「沢山咸」は何だろうか?
「天雷无妄」は、私の臨床では”自然現象”を表すことが多い。
「沢山咸」は今まであまり出てないので、ピンと来ない。
「沢山咸」は”感じる”ことを意味する。何が感じるのだろうか?わからない。
そこで爻辞を頼って、「足の親指がムズムズしませんか?腓はどうですか?太ももは?」などと聞いてみた。当然、「そんなことはない」と、否定された。
全くわからない。易は象徴なのでこんな事もよくある。すべてが見通せるわけではない。
しかたないので、易の解釈を諦めて、本来の目的の漢方の処方に移った。
PTMなら、患者さんの問題がわからなくても、身体にきくので、必要な漢方を選択できる。
そこでいつものように、ツムラの漢方のパネルをつかってPTMで漢方を選んだ。
すると「疎経活血湯」が反応した。
「疎経活血湯」は、瘀血と湿を伴う筋骨格系の痛みに効く方剤だ。
でも、どうして「疎経活血湯」なんだろうか?外傷があったのだろうか?と疑問に思う。
「どこか打ったとか、捻ったとか、怪我をしたとか、ありませんか?」と聞いてみた。
これにも「ない」とおっしゃる。
何か変だ。PTMで反応しても、確証がないと処方するのは気持ちがすすまない。
スッキリしないので、困ってしまった。
そこでひょっとして西洋薬で何か情報がないかと思い、西洋薬でPTMをやってみた。
まず『今日の治療薬』の目次をつかって反応する項目を探した。
すると「15.女性ホルモン製剤、子宮用製剤」で指が止まった。
他の項目は反応しない。
そこで、「15.女性ホルモン製剤」のところのページを開けて、順に素早くPTMで反応する薬剤を探していった。すると、更年期に使う「卵胞ホルモン製剤」のところで、いくつか反応する薬剤がある。
これで、ようやくわかった。この患者さんの問題は「更年期」なのだ、と。
改めて見ると、年齢は49歳と更年期に入っている。更に聞くと、月経がかなりの期間遅れている。ホットフラッシュのような症状も寝ている時にある。ご自身でも、更年期を自覚しているので大塚製薬の「エクエル」を飲んでいるという。
ここまで来て、「沢山咸」の意味がわかった。「沢山咸」は、感覚、感情、敏感、などの”感じること”を意味する。とくに、卦辞に「女を取るに吉」とあるように、”男女間の感応”を表す。更年期とは、女性ではエストロゲンが減って、男女間の感応が衰えていく時期だ。だから、この場合の「沢山咸」は「咸」が更年期で減ってきたことを示していたのだ。さらに、同時に反応した「天雷无妄」は先に言ったように”自然現象”を意味する。改めて、更年期とは”自然の老化現象の一つ”なので、これに「天雷无妄」が反応するのも納得できた。
さらに加えて、漢方では「疎経活血湯」が反応した、この方剤は駆瘀血、補血作用を有する。更年期では桂枝茯苓丸や桂枝茯苓丸加薏苡仁をよく使うが、疎経活血湯が効いてもおかしくない。
今回は、納得できる処方に到達するまで、時間がかかってしまった。。
結局、患者さんには知り合いの婦人科の先生を紹介して、エストラジオールによるホルモン補充療法を受けることを勧めた。それと並行して疎経活血湯を処方して、今回は終了とした。
コメント
●「沢山咸」は、感じること、感覚、感情、敏感、感応などを意味する。本来の意味は上に述べたように「男女間(陰陽)の気の交流、感応」だ。私の臨床ではあまり遭遇しない。今までのケースでは「除草剤で皮膚が感じやすくなっている」患者さんに出たことがある。
●更年期の患者さんは結構来られて漢方治療をしているので、自分では慣れているつもりでも、症状が様々なので、この例のように間違いやすい。注意しないと行けないと改めて思った次第だ。
●患者さんの病態が何かわからない時、「漢方のPTMや西洋薬のPTM」で、反応する薬剤をみて患者さんの病態がわかることがある。通常の医療では、患者さんの問診・検査で病名を決めてそこから薬を決めている。コレは一方通行だ。でもPTMができると、もちろん病気からPTMを使って薬を絞り込むことができるし、病気がわからないときでも、薬から患者さんの病気が何であるかを知ることができる。このような場合はよくある。患者さんが話してくれない、隠れている病気をみつけて治療の対象にすることができる。実はこれが治療上大きかったりする。
●私は西洋薬を使う場合、『今日の治療薬』の目次をつかって、西洋薬を大きな分類で選んで、次にその対応するページを開けて、高速にPTMで反応する薬を探している。
『今日の治療薬』は市場に出ている薬がコンパクトに網羅されているので非常に便利だ。
まったく手がかりのない病態でもこのやり方で、効く薬をえらぶことができることもある。
これを「ドラッグマイニング」と名付けている。金鉱探しのイメージだ。具体的なやり方はフォトタッチメソッドの項目で書く予定です。