「山火賁」症例1:20代女性

”その指輪、捨てるのチョット待て”

今回は半年ぶりに来られた。
いつもお洒落で、今回は髪は赤とピンクに染めて、服も赤色で統一している。
職業は美容師で、お洒落とか美容とは趣味でもあるようだ。
夏に、コロナにかかってから、目の調子が悪く、ピントが合いにくいと言う。
眼科では異常なくドライアイの点眼を処方されただけのようだ。

問診を取りながら、話を聞くと、ストレスもあるという。
それは、1週間前からご主人と別居して、現在は離婚を考えているとのこと。
2人の子供を連れて実家にかえったので、子供の世話も大変。
ご両親に迷惑をかけている状況もストレスになっている。
イライラする事が多いという。睡眠も浅い。不正出血もでてきたという。

そこで横になってもらって診察に入った。
足は冷えがある。肝経には緊張と、同時に虚がある。
多分、疲れがあるのだろう。
腹はやや緊張、肝臓のうえでやはり肝虚がすこし交じる。
気の流れは全体的によくない。滞りがある。
気の流れの停滞は「アストラル体」にあるように感じた。
多分ご主人との仲が悪くなって離婚まで考えているから、感情の乱れがあるのだろう。

以上のように予想して、起きて座ってもらい、PTM易で「この方の問題点は?」と聞いてみた。すると「山火賁4爻」が反応した。
どうして「山火賁」なのだろう?「山火賁」は飾ること、装う、ことを意味する。
この方はお洒落なので、明らかにこの人の状況を示しているのだが、
それがご主人とどんな関係があるのだろうか?と、疑問に思う。

そこでご本人に聞いてみた。
「お洒落が好きですよね?」と、当たり前のことから入る。
「うん、好きで、いつも考えている」と答える。
以前、「山火賁上爻(6爻)」が出た人で、ピアスを外したら頭痛がなくなった人がいたので、
この方に対しても、
「アクセサリーとか、つけたり、外したりしてる?そしたら、どうですか?なにか変わったことがない?」と、なんだか要領をえない質問をした。
すると「旦那に腹が立つから、旦那からもらったアクセサリーを外して、捨てようとおもっている」と、意外な答えが返ってきた。
おまけに、カバンから結婚指輪をだして見せてくれた。
指輪は、なぜだか、クリニックに来てから待合で待っている間に指から外したらしい。

そうすると、この「山火賁」は、”ご主人からもらったアクセサリー”のことを意味するのだろう。さらに”そのアクセサリーを外して捨てること”をも示唆していると取れる。
易に聞いたのは「問題点」なので「捨てるのは良くない」と言える。
実際、「山火賁4爻」が変ずると「離為火」になる。「離為火」は離れることを意味するので、すぐに「離婚」に突き進みそうだ。
これは、「すこしヤバいんじゃない」と思って、そこで、
「早まると、よくないよ。少し、捨てるのはまってみたら」
「捨てるのも、処分するのもいつでもできるし、急がなくていいんじゃない?」と言うと。
 「そう、それなら。。。。」と、もともとアクセサリーが大好きな人なので、とりあえず思いとどまってくれたようだった。

漢方はPTMで、女性のホルモンを整え気分の動揺を鎮める「加味逍遥散」をえらんで、今回は終了とした。

コメント

●「山火賁」は、飾る、装う、色鮮やか、外見などを意味する。私の臨床では「内面がなくて外見を飾った上司」、「指に食い込んだ指輪」、「頭痛を起すイヤリング」などが出てきたことがある。臨床ではそれほど遭遇しない卦だ。

●クリニカル易占では、私はそれほど之卦(変じた卦)を見ない。でも、この例のように、変じたら重大な意味がでそうな場合は積極的に解釈して採用している。今回のように、PTM易で一つしか卦が反応しない場合は、一般の筮竹をつかった易占と同様に、解釈に広がりをもたせるために之卦を見るようにすべきだろう。

●「加味逍遥散」が必要な女性は、「抑肝散」や「抑肝散陳皮半夏」のように、怒りをもっている。