”父には鯛で、自分はメザシ”
1-2月に1回程度来てくれている方。
症状は、いろいろで、その時々でかわる。
今日は、胃が重たいと言ってこられた。
特に食べた後が、重くなる。
以前も、便秘と下痢があるといって、安中散と桂枝加芍薬湯を出したことがある。
今回は少し症状が違うという。
そこで、横になってもらい診察した。
足をみると、特に脾経が虚になっているわけではない。
胃経はやや突っ張り感がある。食べすぎなのか?
腹を見ると、胃が動いていないがそれほど膨満感はない。
胃酸の熱はなさそうだ。
喉が乾燥して、首がややおもい。
目の疲れがある。
ここまでではなにが、原因かはっきりしない。
そこで起きて座ってもらいPTMで「なにが原因?」かを易に問うてみた。
すると、「山雷頤」が反応。
「山雷頤」は顎を意味する。そこから、食べさせる、養う、食べる、食物、飲食などの意味が派生する。
この患者さんで、胃腸が悪いのは、単純に”食べ物があっていない”のでは?と想像した。
そうしたら、何があっていないのだろうか?と思って聞いてみた。
「何か、変わったものを食べませんでしたか?」
「いつもと同じです」と、答える。
「いつもよりたくさん食べるとか、貰い物をたべるとか、ないですか?」
「それも、ないです」と、同様に答えた。
それでは、わからない。
患者さんに聞いてもわからない。自分では合ってないと思ってないことがある。
そこで、いつもお世話になっている”食物の写真が沢山のっているプリント”でPTMでをやってみた。
このプリントは『NHK出版「からだのための食材大全」』(池上他 監修)のカバーをA3用紙にコピーして作ったものだ。代表的な食材の写真が、カバーに網羅的に載っているので、食べ物に問題がある患者さんのPTMには重宝している。
上の「野菜」から順にPTMをしていくと、「魚介」という項目で反応があった。
ということは、魚を食べるのが多いか、合ってない魚を食べているのだろうと予想する。
患者さんには「魚が多くないですか?」と聞いた。
すると、「父が魚が好きで、この前からいい魚屋さんをみつけたので、そこで買うようにしている」とおっしゃった。
更に聞いていくと、父は肉より魚が好きだという。父にタンパクを食べさせるために、色々な魚を買うようになったらしい。今までは近くのコープで大衆魚ばかりだったが、最近は、マグロ、マダイ、ヒラメ、ノドグロ、etc.と(私が名前もしらないような魚)を買ってくるようになったらしい。お父さんはそれに大変満足している。
でも、本人は腹の調子が悪い。
ここまで聞いて「それが、原因ですね」と、私。
「あー、そうですか。美味しいんですけど。」と、患者さん。
「お父さんはいいけど、Aさんは今まで通りのメザシでいいじゃないですか?」と失礼なことをいってしまった。
「それもそうですね。安くすむし、味も慣れているし」と、Aさん。
結論は、「父には良い魚、自分は少なめか普通の魚を」ということになった。
漢方はPTMで、余分なものを食べて胃がはる人に効く「胃苓湯」を選んで終了とした。
コメント
●「山雷頤」は上に述べたように、顎、養う、食べさせる、食べる、食物、などを意味する。
「火雷噬嗑」と比較すると、4爻の”顎に引っかかりがない”ので、噛み合わせがよく「スラスラ物事が進む」と言う意味もでてくる。今までの臨床では「アメリカの食事が合わなかった」、「離婚後の養育費が少ない」、「食中毒」、「お菓子屋さん」、などが反応した。
●今回は、でたのが「山雷頤」一つで、症状とぴったり当てはまるので、意味を取りやすかった。普通は、いくつかの卦がでて総合的に判断しなければならない。
●『NHK出版「からだのための食材大全」』のカバーは便利なので使わせてもらっている。PTMを学びたい人は、日常の食材をえらぶのに、このプリントをつかうと練習になるだろう。
このように、自分が調べたいものの写真や文字が沢山載っている印刷物があるとPTMは簡単にできる。