”仕事が帰ってきてと呼んでいる”
幼稚園の先生。
当院には頭痛や胃腸障害などで通院されている方。
幼稚園の先生を20年近くやっている。
子供は好きだが、最近は職場で居心地が悪いという。
園長とも他の先生ともあまりうまく行っていないようだ。
教育方針があわないという。
勤め続けるのはストレスだという。
別の幼稚園に変わるという手もあるが、もう先生はつかれたので別の仕事を考えている。
趣味としてやっている手芸や裁縫で仕事ができないかと思っている。
でも、具体的にはどうするか考えていない。
来週、辞めることを園長に言うつもりだと、おっしゃる。
横になってもらって、診察した。
足は、冷えがある。
腹は力がない。
もともとストレスがあると腹痛を感じやすい。
胃酸が多いように感じる。
目がおもたい。
全体の気の流れもよくない。
仕事を辞めることを考えているので、それは当然か。
いろいろ考えることも多そうだ。
頭が重たい。
診察しながら、次のように聞いてみた。
「本当に手芸や裁縫でやっていけるんですか?」
「多分、いけると思う。友達に相談した。」と、患者さん。
「でも、子供がすきなんでしょ?」
「子供が好きなので、幼稚園の先生になった」
「そしたら、また、幼稚園を変わったらいいんじゃないですか?」
「それもそうだけど、別の可能性もあるかな、と思って」
なんだか、返事が心もとない。
経済的にはご主人が稼いでいるのでそれほど心配はないらしい。
その点は良かった。
でも、本当に手芸とか裁縫がいいのだろうか?
変に気になった。
起きてもらって、椅子に座りPTM易で「この方はどうしたらいいのか?」を聞いてみた。
すると「地雷復」が反応。
「地雷復」は「復」というぐらいだから、戻る、帰る、復する、を意味する。
これは、仕事をやめて家庭婦人にもどるわけではないだろう。
なぜなら、すでに20年近く働いていて、子供も成人していて、いまさら家庭にもどるとは変だ。
もしそうなら、「風火家人」も同時にでるだろう。
すると、単純に考えて、また幼稚園に帰れということではないだろうか?
また幼稚園の先生をせよ、という意味だろう。
この方は、子供が好きで幼稚園の先生が合っている。
でも、今回は職場の状況がわるく、友達からの誘いもあり迷いがあったので、べつの方向さぐっているのかもしれない。
面白いことに、「地雷復」という卦をPTMをやりながら指で触っていると気の流れが良くなって、患者さんも身体が熱くなってくるのを感じてくれた。
これは、強い反応なので、方向としては幼稚園に帰るのが最もよい選択だろう。
そこで「「復」だから復帰したほうがいいみたいですよ。」「また、先生になったほうがいいんじゃないですか?」と患者さんに言った。
「そうみたいですね。考えてみます」と答えてくれた。
漢方は、腰の疲れに効く大防風湯をPTMで選んで、今回は終了とした。
コメント
●「地雷復」は、帰る、戻る、復帰、回復、繰り返す、などを意味する。以前、この方の場合とは反対で「仕事をやめて家庭に帰る」という意味で出たことがる。その時々の状況で卦の解釈が別になる。
●この方の場合は後日談がある。半年経っても仕事に戻らなかった。幼稚園にも、手芸・裁縫の仕事も、どちらもしていない。結局、家庭に帰ったことになるのだが、家にいても気持ちが安定しない。外来でPTM易で「問題はなにか?」と問うと、「雷火豊」がでた。つまり、ご主人の稼ぎがあるので、焦って仕事をしなくてもいいらしい。ある意味”豊か”なのだ。でも、問題点をきいたので「豊」であることが妨げになっている。たぶん、経済的によくなくて仕事に帰ってた方がいろいろの点で良かったのではなかろうか。
●「大防風湯」は、腎虚傾向で、腰の冷えた、疲れのある場合にPTMでよく反応する。