”油断禁物、そろそろ安泰としておれぬ”
1年ぶりに来院された。問題があるとときどき来られる方。
この1年は特に問題なく仕事も体調も良かったという。
今回は、耳の調子が悪いと言ってこられた。
1週間前から左の耳がつまりだし、耳鳴りがおこり、耳鼻科に行ったら
中程度の難聴がわかり、突発性難聴と診断された。
薬が処方されているが治りがわるい。
頭のMRIも撮ったが異常なし。
奥さんも一緒にこられたが、心配そうにみえる。
いろいろストレスがあるのだろうか?
横になってもらい診察にはいる。
足は軽く内熱がある。少しむくんでいる。
腹は、やや食べ過ぎになっている。
胸脇苦満もすこしある。
首がおもい、目がおもい。
全体の気のながれも良くない。
すっきりしない。
起きてもらって座ってもらいPTM易で「何が問題か?」と問う。
すると「地天泰」が反応。
「地天泰」は普通は良い時にでる卦だ。安定、安泰、泰然、健康などを意味する。
しかし、どうみても安泰とはみえない。だが試しに聞いてみた。
「いま状況は安泰、安定していますか?」
「そうでもないです。九州の鹿児島に転勤がきまりました。」
「ええ?鹿児島ですか?子供さんは受験でないですか?」
「はい、いろいろかさなって。親の介護もあるのですが。。」
それではとても安泰とはいえない。
この数年、安泰の状態だったのが、揺れてきたのか?
今の状況は泰の反対の意味にとるべきだろう。
易では「泰」はその裏に「否」をやどすので、常に「否」に移行する可能性に注意する必要がある。
このまま進むと「天地否」にひっくり返る危険がある。
「否」になると、動かすのは困難だ。
いまの「泰」の状態なら、まだ病状が改善する可能性がある。
そこで、PTMで漢方を選ぶことを試みた。
でも、漢方の反応が全体的にわるい。
こんな時は西洋薬が優先的に効くことがおおい。
いつものように『今日の治療薬』の目次を指でなぞりながらPTMで必要な項目を探していった。
すると、「ステロイド」の項目が反応。
次にそのページを開けて、さらに指で個々の薬剤をスキャンしていった。
最終的に、「リンデロン(ベタメタゾン)」が反応した。
ステロイドをつかうしかないだろう。
神経の障害には初期にはステロイドで突き動かすしかない。
そしたら、他の薬も効いてくる。
その後で、漢方を選ぶと、疲れに対する当帰建中湯と補中益気湯が反応。
ビタミンは耳鼻科からもらっているのでそれを併用して、リンデロンを1週間と、上の漢方を処方して、今回は終了とした。
コメント
●「地天泰」は、安定、安泰、泰然、健康などを意味する。だから病気を主に診る臨床ではほとんどでない。でもこの例のように、「泰」から動くとき、ズレていくときにはでることがある。
●「地天泰」の裏の卦には「天地否」がある。「天地否」は、塞がり、閉塞、停滞、不通などの凶の意味がある。易は”変化”を重視するので、この2つの卦はお互いを可能性として含む。陽が陰を宿し、陰が陽を宿すというのと全く同じだ。今回は、まだ「泰」の状態だったので、治療に反応する可能性がある。「否」になると良くない。
●PTMで漢方が十分に反応しないことがある、その時は西洋薬をつかうべきだ。場合によってはハーブとかホメオパシーのレメディーということもある。これらすべてPTMで選択できる。だからウチの処方は多くは漢方だが、西洋薬も組み合わせることが一般的だ。漢方にこだわって、大量の煎じ薬を処方することはない。