「水地比」症例1:30代女性

”付き合いもホドホドに”

皮膚のあちこちに5年前から痒疹がでると言ってこられた人。
皮膚科に通って液体窒素で焼いたり、色々薬をのんでいるのだが良くならない。
痔もあり、肛門科に行っているが、これも再発を繰り返し良くならない。

当院初診のときに、腹診で肝臓が腫れていて、「肉食」が多いとわかったので
肉は減らすように注意した。
食事に注意して漢方を飲んで、少しはいいようだが、まだまだよくないとおっしゃる。

今回も横になってもらって診察する。
腹は相変わらず張っていて、下腹に瘀血のかたまりを触る。
肝臓も前よりいいが、相変わらず食べすぎてうっ滞している感じがある。
胃袋も膨満気味でやはり食べすぎだろう。

食べ過ぎると、漢方を飲んでも効きが悪い。
患者さんにいつも言っていることがある。
「一食が《両手の平いっぱいの食べ物》だとすると、《エキス剤1包》と
比較してもらうと、明らかに漢方が負けてしまうでしょ」、と。
「合わないものをたべると漢方が利きませんよ」、と。
「漢方は西洋薬と違って、そのあたりに生えている草ですから、食べ物に負けてしまうよ」、と言っているのだが。  イメージ的には次の図になる。

さて、起きて椅子にすわってもらって、「問題点は?」と易にPTMで聞いてみた。
すると、「水地比」と「天火同人」が反応。

「天火同人」は仲間、友達、同僚を意味する。「水地比」は、仲がいい、付き合い、親しむ、を意味する。だから、ひょっとして「友達と仲が悪いこととかない?」と聞いてみた。
なぜなら、殆どの問題点は、卦のマイナスの意味に対応することが多いので。
ところが、患者さんが言うには「とても人付き合いがよくて、仲が悪い人なんか独りもいない。」とおっしゃる。予定表は、付き合いで毎日埋まっているという。交友範囲がとてもひろい人のようだ。
なんと、この患者さんの場合は「比」はプラスに解釈すべきだったのだ。

つまり、人付き合いが良すぎると、どうしても食事を一緒にすることになる。
すると、美味しいもの(すなわち高カロリーのもの)を沢山食べることになる。
だから、自分独りなら食べ物に用心できても、他人となら無理ということ。
そういうことか、と納得できた。

だから、この患者さんに対するアドバイスは「付き合いをへらして、会食をへらすこと」となる。
でも、患者さんが言うには「忘年会に毎日誘われるから、無理かも。。。」と。
これには、アドバイスしようがないので、「頑張って努力して、食べないで。。」といって、
漢方はPTMで九味檳榔湯を選んで、終了となった。

コメント

●「水地比」は、付き合い、親しむ、仲良し、などを意味する。親分子分というのが出たこともある。

●卦の意味の解釈は、上述のように、マイナスに解釈すると当たることがおおい。でも、この患者さんのように、プラスに解釈する必要があるときもある。これは聞いてみないとわからない。

●「天火同人」は同僚、同級生、友達とかをいみするのでわかりやすい。別の症例で書いたので見てください。