”妹が浮かばれない”
今回は2回目の来院の方。
前回の主訴の首の痛みは、すぐに良くなったという。
長年の痛みがとれたので感謝している。
肩のこりもへった。
睡眠もいいという。
胃腸の調子がまだ良くない。
下痢と便秘を繰り返す。
これは随分前からあるのですぐには良くならないかもしれない。
横になって見せていただく。
足には冷えがある。
腎経に虚があるので腎虚だろう。
腰が痛いことが多い。
腹にもやや虚の所見がある。
胃腸には水が多い。
尿も回数が多いという。
更に見ていくと、頭に霧がかかっているようでボーっとする。
なにかスッキリしない。
そこで聞いてみた。
「頭がぼーっとしませんか?」
「よくぼーっとします。最近集中力がなくて。」
入っているエネルギーを見ようとしても霧があるようで見えない。
何が問題なのか?
起きてもらってPTM易で見てみた。
問は「頭がボーッとして、気の流れが悪い原因は?」としてみた。
すると「地山謙」「風火家人」「雷沢帰妹」で3つとも地下で反応がある。
地下というのは、初爻の下でPTMで反応があることを私が名付けたもの。
多くは死んだ人を表す。
そこで聞いてみた。
「身内で、誰か亡くなった人はいませんか?」
「オバが1年前になくなりました。」
でも、それでは気が動かない。
当たっていると気が流れるのだが、流れない。
オバではない。
他には誰かいないのか?
「他に誰かいませんか?兄弟とかどうですか?」
「妹が20年前に交通事故で亡くなりました。」
言った直後から気が流れ始めた。
そして重たい空気がクリアーになってきた。
背中に入っているエネルギーの輪郭が見えてきた。
これは妹だ。
雷沢帰妹は、多くは恋愛などを意味するが、兄弟を意味することも多い。
でも、どうして20年前の妹のエネルギーが入っているのか?
「20年前に亡くなって、お墓に入れてご供養してたんでしょ?」
「それが違うんです。母が妹の骨を死ぬときまで部屋においていたんです。」
「えーっ?」
「母が5年前に亡くなって、それで骨をお墓に入れました。」
なんと、それが原因だ。
事故で非業の死にあって、おまけに骨を家に残しておいたとは、困ったことだ。
これでは死者が浮かばれない。
すると地山謙は、何を意味するのだろうか?
この卦は通常は、謙遜、謙虚などを意味する。
でも、時々「謙」という字から「嫌」という字が浮かんでくることがある。
嫌悪の感情、たぶん自己嫌悪の感情などにとらわれているのではないだろうか。
事故や自殺で亡くなった場合、十分に供養しないと、恐怖、怒り、嫌悪などの感情が残る。
母の部屋に骨を残していたということから、嫌な感情が残っているのだろう。
もう一度妹さんについては、丁寧にご供養するように勧めた。
漢方は八味地黄丸を処方して終了とした。
コメント
●「地山謙」は、謙遜、謙虚、控えめなどの意味がある。多くは謙虚でないときに出る卦だ。
●ときどき「謙」から「嫌」の文字が連想されて、嫌悪、嫌い、嫌だ、などの意味で出ることがある。この症例がそれにあたる。
この症例では、謙虚、謙遜の意味ではピッタリと解釈できない。
あるいは、「地山謙」は地のしたに山があり、山の重しで動けない、つまり成仏できない、とも解釈できる。
●亡くなった方に成仏してもらうためには骨は早く墓に入れた方がよい。そして土に返した方がいいと思う。猫でも犬でも人間でも同じだ。これは私が臨床から感じることで、宗教家の受け売りではない。