”自然に逝く”
月に1回来られる方。
診察室にはいるなり、Hさんが亡くなったと言われた。
Hさんは30年来の付き合いだという。
慢性肝炎があって、そこから肝臓癌になられて
手術を勧められが手術はいやだといって受けなかった。
当院でも漢方の処方を時々させていただいていた。
この夏には来なくなっていたので不思議に思っていたら、
3日前に自宅で亡くなったという。
なくなるまえには、患者さんはHさんの自宅に駆けつけて
家族とともに亡くなるときに立ち会えたという。
患者さんにとっては長くからの友達なので心がつらい。
横になって見せていただく。
足はむくみがある。
暑いので水をたくさん飲む。
腹にも水がおおい。
尿も回数がふえているという。
腰痛もある。
臍下不仁があるので腎虚の所見だ。
更に意識を集中してみると、
左の肩が重たい。
このエネルギーはおそらくHさんのものだろう。
よほど親しかったので、憑いていてもおかしくない。
「肩が重くないですか?」
「そうです、あれから重いんです。多分Hさんだと思います。」
患者さんも理解されている。
起きてもらって、PTM易で見てみた。
問は「肩にのっているエネルギーは何ですか?」とした。
すると、「水地比」「天火同人」「天雷无妄」「火山旅」「水山蹇」などが反応した。
天火同人は、仲間、友達をいみするので、Hさんでいいだろう。
水地比は、仲が良いことを意味するので、Hさんとの関係をしめしている。
それでは、天雷无妄はなにか?
天雷无妄は、自然のまま、などの意味ででる。
この場合は、手術もせずに家で自然に亡くなったことを意味するのだろう。
火山旅は、文字通りあの世に”旅立つ”ことを意味する。
水山蹇は、足止めの意味があり、亡くなったがまだこの世に残っていることを示唆している。
さらに、すべての卦で「地下1」の位置で反応があった。
別の所でも書いたが、地下1は初爻の下の1つめのところ。
地下は死んでいることを示す。
1つ目なので死んでから日が浅い。
時間が経つにつれて2,3となっていく。
肩に入っているエネルギーがHさんだと確認できたので、患者さんもすこしホッとして気が流れ始めた。
漢方は八味地黄丸を処方して終わりにした。
コメント
●「天雷无妄」は、自然のまま、あるがまま、正直、すなおなどを意味する。
臨床的には、動植物のことで出ることがおおい。
もう一つは、欲望のままといういみで出ることもある。
●人間が亡くなることも自然現象なので、天雷无妄が出てもおかしくない。とくに、この症例のHさんは現代医学の治療を受けていない。自然のままに経過して亡くなったと言える。このような人は今の時代には少ない。
Hさんは、死ぬことをあらかじめ自覚されていたと思う。
だから、「沢水困」「天水訟」「坎為水」などの苦しみを表す卦はでなかった。
「水山蹇」は亡くなってすぐなので出るのは仕方ない。
49日も過ぎれば出なくなるはずだ。