「火雷噬嗑」症例3:50代男性

”早食いで寝れない”

月に1回来ていただいている方。
高血圧や高脂血症もあるので漢方以外に西洋薬も処方している。
最近は、睡眠が浅くて早く覚めるという。
本当は6時間程度寝たいのだが4時間で覚める。
その後も寝れるが、昼間にスッキリしない。
疲れが残っている感じがする。
夜にトイレに起きるわではない。
また、悪夢があるわけでもない。
ストレもそれほど多くない。
さて、原因は何だろうか?

横になって見せていただく。
脚はむくみがある。
でも、よく動いているので筋肉はしまっている。
健康そうな脚だ。
腹は、膨満気味。
明らかに食べ過ぎだ。
肝臓もやや鬱滞している。
脂肪肝をうたがう。
高脂血症があるので、食事に注意しなければいけない。
喉もややつまり気味。
頭がすこし重たい。
首と肩がやや重い。
気の流れはそれほどいい訳ではないが、
悪いエネルギーは外から入っていない。
それでは何が睡眠障害の原因なのか?

起きてもらってPTMで易を見てみた。
問は「この方が寝れない原因は?」としてみた。
すると、「火雷噬嗑」が反応した。
「火雷噬嗑」は、かみ合わせが悪い、出る杭、障害、異物などの意味がある。
歯が悪いときにも出ることがある。
そこで聞いてみた。
「歯は悪くないですか?」
  「いや、今は悪くないです。治療が終っています。」
また、食べ物が合ってないときもこの卦が反応することがある。
さらに、聞いてみた。
「何か、最近好んで食べているものはないですか?」
  「ないですね。いつもと同じです。」
本当だろか?
気になったので、食材の画像(図)をつかってPTMで見てみた。

確かに反応がない。特に悪いものを食べているのではなさそうだ。
すると、何が原因だろうか?
ひょっとすると、早食いが原因ではないだろうか?
早食い→噛まない→歯が悪いのと同じ→火雷噬嗑、と連想がつながる。
「早食いでないですか?」
  「そうですね、ガツガツ食べます。昼はいそがしいので弁当を5分で食べます。」
「えー、5分は早すぎない?夜も早いですか?」
  「夜も、たくさん食べるので、早食いです。妻が呆れています。」
なんと、噛まずに食べる人だ。
それでは、胃腸に負担がかかる。
寝ている間に、胃腸が苦しくなって、起きるのだろう。
ゆっくり噛んで時間をかけて食べるようにアドバイスした。
そうすれば食べる量もおのずから減るだろう。
漢方は五積散を処方して終わりにした。

コメント

●「火雷噬嗑」は、障害、異物、ギクシャク、出る杭、などを意味する。
肉体的には、歯の問題、口の問題を意味することがある。
この患者さんの場合は、歯の問題から連想して「早食い」にイメージが繋がった。

●睡眠障害があるときには、簡単には睡眠薬を処方すればすむのだが、
別に原因があることがわりとある。
精神的な問題以外で多いのは、夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群だ。
この2つは、診察でだいたい把握できる。また治療法もある。
しかし、この方のように早食いが原因のときは、診察のみではわかりにくい。
易をつかうと、わかりにくい原因にもアプローチできる。

●一般的に、夜遅くたくさん食べるひとは睡眠が悪い。
胃腸が寝ている間に休まることがないからだ。
この方は、たくさん食べるのに加えて、噛むことが少なかった。
多量に食べるのが原因なら「雷天大壮」「沢風大過」などが出るはずだ。
口に問題があったので「火雷噬嗑」が出たと思われる。