「 天水訟」症例2:30代男性

”社長からの要求”

2年ぶりの方。
忙しくて来れなかったという。
今回は以前ほどひどくないが頭痛がある。
それもボンヤリする頭痛。
重くて頭が働かないという。
目も焦点が合いにくくて疲れる。
また、睡眠も時間が短くて寝た気がしないという。

そこで横になってもらい見せていただく。
足は緊張がある。
胃経、肝経の緊張がある。
腹は張っている。
食べ過ぎだ、肝臓が鬱滞している。
肉類が多いのではないか。
皮膚のかゆみもすこしある。
アレルギーの疑いがある。
首が重くて。
舌が荒れている感じを受ける。
太淵に鍉鍼を当てて意識を集中すると、
首の重いのがよくわかる。
頭の中がまとまっていない感じだ。
さらによく見ると左肩の後ろの上の方から圧迫感を伴ったエネルギーが来ている。
これはなにか?
「忙しいんですか?」
  「とても、たまらない。」
「ストレスがおおいんですか。?」
  「この1月休日がなかった。」
すごく忙しいのがよくわかる。
それなら、頭痛が起こってもおかしくないだろう。

起きてもらってPTMで易を見てみた。
占的は「体の奥の問題は?」としてみた。
すると「天水訟」「天火同人」「山火賁」「山沢損」などが反応した。
「天水訟」は訴え、要求、苦情、言い争いなどを意味する。
臨床ではとても多い卦だ。
それもここでは4,5爻が反応するので、上からの要求と見た。
「上司から要求が多いですか?」
  「いっぱい言われる、大きな仕事に会社が関わったので、うるさい。」
それなら理解できる、4爻は直属の上司、5爻は社長クラスだろう。
診察した時に上からエネルギーが入っていたのは、”上からの要求”に対応する。
「上司もピリピリしていないですか?」
  「そうなんです、社長がゲキを飛ばしている。」
すると「山火賁」は3爻なのでこの人だろう。
あまりにも要求や文句をいわれるので腹が立っている。
「山沢損」は今の仕事が割に合わないと思って、損をしていると感じている。
とりあえず、しばらくこの状態が続くだろうというので、
漢方は補中益気湯と抑肝散陳皮半夏を処方して終わりにした。

コメント

●「天水訟」は言い争い、論争、訴訟、訴え、文句、要求などででる。

●臨床ではとても多く出る卦だ。とくに要求、苦情、文句、などの意味で頻出する。

●誰が文句を言うかは、「内卦」だと自分、「外卦」だと相手と見る。今回は4爻は直属の上司、5爻は社長と解釈して正解だった。そのように、爻の位置とクライの順序が対応する。

●患者さんに入っているエネルギーをみていると上の方から来るのはだいたい自分より地位の上の人や組織だ。下の方から来るのは地位の下の人や、子供や動物が多い。