”言われるままに”
初診の方。
2ヶ月前から左の前頭部が痛いという。
頻度はそれほど多くない。月に2回程度だ。
でも、痛くなると仕事に差し支えると言う。
さらに、ときどきクラクラするめまい感がある。
もともと頭痛持ちでないし、めまい持ちでもない
最近起こってきた症状だ。
ストレスがおおいのだろうか?
仕事が忙しいという。
4月のこの季節は忙しい人が多いのでそれの影響だろうか。
頭痛があるのでCT検査をしたが異常は認めなかった。
横になってもらいしんさつする。
足に触った瞬間に疲れがあるのがわかる。
肝経に虚をみとめる。
慢性的に疲労がある。
左の股関節がかたい。
瘀血を認める。
腹は胃の部分の緊張がある。
太淵に鍉鍼をあてて意識を集中すると、
肩に沢山の細かい仕事が載っているのがわかる。
重たい。
よくあるのは、大きな仕事で2-3個というやつ。
とくにビジネスマンの男性に多いのがこのタイプだ。
差し迫ったプロジェクトとか、発表とか、片付けるべき仕事が肩に乗る。
しかしこの方の場合は小さな仕事が沢山乗っている。
このようなのは初めてだ。
そこで聞いてみた。
「沢山、雑用とか、細かい仕事がおおいですか?」
「そうなです、いっぱいすることがあって忙しいんです。」
「何をやられているんですか?」
「秘書をしています。」
「秘書?企業の?政治家の?」
「そうです、社長秘書です。」
うちには秘書の方はあまりこない。
大きな企業の社長秘書だという。
それは忙しいだろう。
細かい仕事が肩に乗るのはこれで納得できた。
忙しいのもわかる。
そこで起きてもらって、さらに詳しく状態を易に聞いてみた。
「身体の奥にある問題はなにか?」と問いを立てた。
すると「天水訟」「天火同人」「水天需」「山沢損」「巽為風」
などが反応した。
「天火同人」は5爻が反応するので社長でいいだろう。
5爻は最も偉い人をあらわす。
「天水訟」は要求でいいだろう。社長からの指示、要求だ。
「水天需」は、待つことをいみするが、これはなにか?
”待つ”にも色々種類がある。
ゆったり待つ、寝て待つ、焦って待つ、ハラハラ待つ、など様々だ。
この人の場合は、どれか?
「なにか待っていますか?仕事を待っている?」
「次に何を言われるかと待っているので、先の仕事をそれまでに終わらせないといけない。仕事を急いでこなしています。」
つまり、焦って待つのほうだろう。
「山沢損」は、あまり面白くないと思っている。マイナスの割にはプラスが少ない。
最後に「巽為風」はなにか?
「巽為風」は巽順なので、従うこと。それも風のように、目立たないように付き従うこと。まさに秘書の役割を示している。
この方の場合は、社長からの仕事が多くて、次々にこなしている様子がよくわかる。
秘書として非常に優秀な方のようだ。でも、つかれている。
そこで今回は当帰建中湯を処方して終わりとした。
コメント
●「巽為風」は「巽」が2つ重なった重卦なので巽の特徴をそのまま持っている。従う、服従する、へつらう、などだ。「沢雷隨」も従うだが、これは付いていく、追随する、ルールに従う、時勢に従うなどでまだ主体があるように思う。巽の従うは影のように従うことで主体が薄い。
●臨床では、命令に従う、おとなしい人、などの状況で出る。
●また巽は風として入り込む特徴があるので、風邪などの感染症、花粉症、黄砂などでもこの卦が反応する。