「沢風大過」症例2:30代男性

”上からの多すぎる要求”

最近は月に1回程度来られるようになった。
去年は頭痛は減っていたのだが、
今年になりクスリをのむ量が増えている。
仕事が忙しくてストレスがおおいという。
天気が悪いと頭痛がひどい。
片頭痛の特徴なので、トリプタンを処方している。
今回も頭痛がおおいと言われる。

何がストレスかと聞くと、
最近、勤めている店を任されたらしい。
前の店長が辞めて、そのかわりに店長になった。
責任が大きくて忙しいと言う。

横になって診察する。
足は緊張している。
胃経のながれがわるい。
腹は、かるくガスが溜まっている。
胸脇苦満が少しある。
太淵に接触鍼をしてみてみると、頭がボーっとしている。
気の流れがスムーズでない。
ストレスがあるのはわかるのだが、単に忙しいだけなのか?
店長になったのなら昇進なので喜んでもいいのでは?

そこで起きてもらってPTMで易を見た。
問は「どのようなストレスか?」と聞いてみた。
すると「天水訟」「天沢履」「天火同人」
「沢風大過」「山沢損」「天風姤」などが反応する。
天水訟、天火同人は外卦(34,5,6爻)が反応した。
通常、内卦(1,2,3爻)は自分で、外卦(4,5,6爻)は相手と見る。
だから、他人からの訴え、要求がおおいようなイメージだ。
状況からして、今回は店の上司、オーナーだろう。
店長といえども上にはオーナーがいる。
「オーナーからの要求とか苦情とかないですか?」と、聞いてみた。
  「それが多いんです。こまります。」と、答えられる。
沢風大過も外卦が反応するので、オーナーからの要望が多すぎるのだろう。
多すぎて、処理できないときにこの卦がでる。
卦辞では「棟木がたわむ」とあるように、潰れそうになっている。
そうしたら、のこりの「天風姤」「山沢損」は内卦が反応するので、自分を意味する。
天風姤は1陰の上に5陽が乗っているので、これも責任が肩に乗っているときによく出る卦だ。
山沢損は文字のどおりに、損害を被っているときに出る。
だから、この患者さんは店長になっても、責任ばかり多くて割に合わないと思っている。

ストレスの状況はわかった。
どうするかが問題だが、店を改装したばかりなので動けないだろう。
しばらく様子を見たほうがいいだろう。
漢方は、補中益気湯と抑肝散陳皮半夏を処方して終わりとした。

コメント

●「沢風大過」は、臨床では仕事が多過ぎる、期限をすぎるとかが出ることがある。

●この方の場合は、上からの要求が多すぎた。自分の立場でみると仕事が多過ぎるわけだが、かわりに「天風姤」が出た。この卦も”のしかかる重圧”という意味でとれる。

●卦の意味を考える時に、内卦は当方、外卦は相手と見ることが多い。これは易の常法だ。