「雷火豊」症例1:30代男性

”ケバい「豊」には耐えられぬ”

体調不良があると時々来てくれる方。
今回は、胃腸の調子が悪いと言って来院。
胃が痛くなって、食欲がなく食べれない。
多分、忙しすぎるのが原因だろうと、ご本人は言う。
残業も多いらしい。

そこで、横になってもらって診察をする。
足は、たしかに胃経が虚になっている。冷えて元気がない。
腹は、胃が張って動いていない。この感じでは、胃酸も多いように思う。
更に見ると、首が重い。肩こりもあり目もつかれている。
なるほど、仕事が多くて目をよく使っている証だ。
でも、引き続き高次のエネルギーレベルを見てくと、背中部分に何か重たいものを感じる。
「これは、何?」と思い、意識を集中していくと、どうも”部屋のような空間に
人がいて、ひとりの人が横を向いているイメージ”が浮かんでくる。
単独の人の念が入る時は、”輪郭がハッキリした人”として感じるのだが、
今度はそうではない。仕事場の大きな部屋のような感じがする。
横を向いた人は誰だろうか?と疑問に思う。
そこで、診察しながら患者さんに聞いてみた。
「仕事場でチームで仕事をしていますか?」
  「いや、一人です」
「仕事場で何か問題はないですか?大きな部屋とか」
  「大きな部屋にみんなの机があって、別の人が、うるさい人が一人居て。。」
「それで集中できない?」
  「そうなんです」
「その人は男ですか、女ですか?」
  「女性です」
なるほど、横を向いた人は女性なのだ。
横を向いているからこの患者さんには、悪意も好感も持っていない。
ただ、こちらがうるさいと感じているだけなのだろう。

そこで、起きてもらい座ってもらってPTM易で問題点を具体的に聞いてみた。
すると、「雷火豊」、「天風姤」、「山風蠱」がでた。
「雷火豊」は「火」の上に「雷」がのっているので、よく動く、賑やか、騒々しいなどの問題を示すことがある。多分この人は”うるさい”のだろう。
「天風姤」は女性に関係することでよく出る卦だ。初爻から指で上になぞっていくと、5爻のあたりで反応する。すると、この患者さんより地位が上かも知れない。
そこで「結構、上の人?」と尋ねると、
「ええ、大先輩なんです」と答える。
「山風蠱」は、汚れ、腐敗、病気などを意味するので、次のように聞いてみた。
「なにか、病気があるとか、汚いとか、性格が腐っているとか、、、ないですか?」
「なるべく、付き合わないようにしているので、分からないなァー、、」
それもそうだと、思う。
「でも、ピンクとか着て、ケバケバしい人だから。。。」
なに、ピンクを着ている?それならば、「蠱惑」かもしれない。

ここで、3つの卦が結びついた。
「蠱」を蠱惑とみると、男を惑わす象がある。「天風姤」も同様に、色情の象を含む。また、「雷火豊」は豊満な女性のイメージを呼び起こす。
これらから想像される女性は”豊満で色っぽく、活動的で騒々しくて、男を手玉にとるようなケバケバしい中年初めぐらいの女性”だ。
でも、時間がないのでここまで、患者さんには確認できなかった。
(診察時間内にやるので、すべてやって一人の患者さんに10分以内しか取れない)

それでも、問題点がわかると、スッと気が流れ始める。
この患者さんも、自分は仕事が忙しくて胃腸が悪くなっていると、思っていたのだが、別に原因はあったのだ。
とりあえず、胃は動きだしたので、PTMで漢方は「桂枝加朮附湯」を選んで、処方して、終了とした。

コメント

●「雷火豊」は豊か、豊富、豊作、金もち、盛大などを意味する。私の臨床では、面白いことに「お菓子、甘い物」として反応が出ることがとても多い。甘いものを食べすぎている人にはこの卦がよく反応する。他にはこの例のように「騒々しい」、「うるさい」などと出たり、「自分はあくせくしているのに相手はゆったりしている」などと出ることがある。

●「天風姤」は、以前に書いたように、出会い、女性問題、男女関係、などで出る。

●「山風蠱」は、以前書いたように、汚れ、腐敗、乱れ、内部からの崩壊、病巣、などで出る。臨床的にはとても良く遭遇する卦だ。

●ここでPTMで選んだ「桂枝加朮附湯」は、この患者さんの問題点を直接的に解決することはない。あたりまえだが、どんな漢方をつかったところで、そのうるさい人が静かになるわけはない。でも、易で問題点が浮き彫りになると、多くの患者さんで、停滞していた気が流れ始める。すると、何らかの解決の方向に物事は動き出しはじめるように感じている。その時にPTMで選んだ漢方は何らかの助けになると思っている。一方、気の流れを取れない患者さんの場合は、いくら西洋薬や漢方をつかっても良くなることはないと経験上感じている。だから、私の治療は「気に基づく医学」だと思っている。