”コロナになったらスローで行こう”
1月前にコロナにかかりその後からダルイと言ってこられた。
当院にはときどき頭痛で来られている方。
今回は半年ぶりだ。
コロナの症状は、38度程度の発熱と、咳が続いたという。
3日ぐらいでよくなって、自宅待期の後も喉の違和感がしばらくあった。
でも、今では呼吸器の症状はない。
その代わりに、倦怠感があり、ダルくなり、昼間も眠たいという。
横になってもらって診察に入った。
足は冷えがある。むくみがあるので冷えがきつく感じる。
腰も冷えている。
腹は、下腹の張りがある。
でも全体的には虚の腹だ。
右手の太淵に接触鍼をあてて全体の気のながれを見てみた。
すると、全体的に気のレベルの低下があった。
特に背中の気の低下があるのに気づく。
背中はコロナの時に流れが悪くなる部位だ。
私の経験では、急性症状があるときには背中(胸椎3-5のあたり)に熱を持つ。
症状が落ち着いた後は同部位のこわばりがのこり、気の流れが悪くなっている例が多い。
この患者さんも背中のこわばりがあり、そこにエネルギーの低下がある。
簡単に言うと、世間で言う「オーラ」の虚が背中に出ている。
そこで聞いてみた。
「背中が寒くないですか?」
「ええ、寝ている時も寒い」
「味覚とか嗅覚は大丈夫ですか?」
「ええ、異常はありません。」
一般的には多い味覚嗅覚障害はないようだ。
ここで起きてもらって、椅子に座ってもらいPTM易で「何が問題か?」と聞いてみた。
すると、「沢水困」、「水山蹇」、「風山漸」が反応した。
「沢水困」は、困難、困窮、などを意味するが、私の経験では”閉じこめられて困る”ときによく出る卦だ。だから、コロナの時の”自宅待期”が「困」を表すのだろう。
さらに「水山蹇」は、足踏み状態、進めないこと、を意味する。
単純に、コロナで物事を進める事ができなくなったということだろう。
同様に、「風山漸」は、ゆっくり、徐々に、スロー、などの意味がある。
だから、コロナのお陰で、閉じこもり、足踏み状態になり、何かがスローになってしまったのでないだろうか?
そこで聞いてみた。
「コロナで、何か進みが遅くなっていませんか?はかどらないんじゃないですか?」
「予定の仕事が遅れている。自宅にこもってイライラしていた。」
「足踏み状態の感じ?」
「そんなかんじ。同じ所から進んでいない。」
「そして、仕事に復帰した今でもシンドイので、ゆっくりとしか進まない?」
「そうです、ダルイのでゆっくりとしか出来ない。昼も眠いし、焦る。」
やはり、そうだ。コロナが治っても、影響が残ってスローにしか動けない。
物事がはかどらない。
それが、この方の問題だ。
でも、これは仕方ないのではないか。病気の後は効率が落ちて当然だ。
当たり前のことに抗おうとしているのが問題なのだろう。
「病気のあとなので仕方ないんじゃないですか?」
「そうですか?」
「もっと酷い症状が残っている人がウチにも沢山来ますよ。」
「そうですか?」
「この漢方を飲むと少しましになるので、飲んでみて」と、言って、
漢方をPTMで選んだ。
今回は、冷えとエネルギー低下に対して「附子理中湯」を、乾燥と疲労に対して「炙甘草湯」を処方して、終了とした。
コメント
●「風山漸」は、漸進、徐行、ゆっくり、だんだん、など進みが遅いことを意味する。
臨床ではあまり出ない。この卦が出た時は、急いでやると遣り損なうことが多いので注意が必要だ。
●「沢水困」、「水山蹇」は以前アップしたので見てください。
●今回の症例は、コロナで閉じこめられた(沢水困)→ そして足踏み状態になった(水山蹇)→ 治ってもゆっくりとしか進めない(風山漸)というふうに、時系列で問題点が出たのが面白い。このような例はあまりない。
●コロナの後遺症の患者さんは、ウチにもわりとくる。多くは”背中のこわばり、ひえ、気の低下”として身体にのこっている。その部分を動かすような処方を組み合わせて使うと良くなっていく。PTMができると、コロナ後遺症のような厄介な症状にも対応できる。