”老母の訴え多くして孝行も大変”
当院にはコンスタントに漢方治療のために来られている方。
漢方はその時々の証に合ったものを処方している。
今回は、1月ぶりの来院となった。
特に仕事もしておられないが、忙しいという。
年末なのでせわしないという。
更に、足が冷えてきたとおっしゃる。
早速横になって、診せていただく。
足は少しむくみがちで冷えがある。
乾燥もある。
腹を診ると、腰がすこしかたいのがわかる。
運動不足のようにおもわれる。
胃の流れはそれほどわるくない。
胸脇苦満もない。
喉の感想がある。
全体の気のながれはとれるが、停滞がある。
何が停滞の原因か?
起きてもらって、座ってもらいPTMで漢方を選ぶ。
すると、「抑肝散加陳皮半夏」が反応した。
この漢方はイライラするとき、怒りがある時に反応する。
何か怒りの原因があるのだろうか?聞いてみた。
「イライラする事がありませんか?」
「たぶん、母のことで、介護がたいへんで」
「介護ですか。ストレスですよね。介護のなにがイライラしますか?」
「やることが多くて、いっぱいあるので、自然とイライラする」
やることが多いと言うが、確かに自宅で介護していると多いだろう。
イライラしても当然だ。
念のために、この段階で、PTM易で「何がストレスの原因か?」と聞いてみた。
すると「天水訟」と「雷火豊」が反応した。
「天水訟」は、裁判、訴え、要求、苦情などを意味する。
裁判ということはないだろうから、多分、お母さんからの”訴え、要求”が多いのだろう。
そこで聞いてみた。
「お母さんから、アレして、コレしてといった、要求が多くないですか?」
「そうなんです。欲しい物があるとすぐに買いに行かされるし。何かあるとすぐに呼びだされる。」
「まるで、召使い?」
「そうなんです、手足代わりですから。」
お母さんは、90歳近くになり病気をされて、自分では自由に動けないので、子供に頼っているのだろう。
おまけに「雷火豊」が出ているから、結構口うるさい人ではないか?聞いてみた。
「お母さんは、アレやれ、コレやれとうるさい人でないですか?」
「口は達者なので、すごく文句をよく言う」
「認知症もないし、、、?」
「頭はしっかりしているので、余計にうるさい」
「そうですか、すごいですね。」
「仕方ないですし、年を取っているのでなるべく言うことを聞いてあげるようにしています。」
「そうですか、仕方ないですね、、」
漢方をもう一度PTMで選びなおしてみると、最初の「抑肝散加陳皮半夏」に加えて、疲れと乾燥に対する「炙甘草湯」が反応した。抑肝散加陳皮半夏を朝に、炙甘草湯を夕方に処方して、今回は終了とした。
コメント
●「天水訟」は、訴え、裁判、要求、苦情、文句、などの意味で反応する。私の臨床では非常に多く遭遇する卦だ。この卦が出た時は、誰が誰に訴えているか、その人を同定するすることが大切だ。患者さん自身を含めて周りの人について聞いてみることが必要だ。以前は「遺産相続の裁判」、「上司から要求が多い」、「待遇の改善を訴えたい」などとして出たことがある。
●「雷火豊」は以前にアップしているので見てください。
●診察中に気の流れが悪いと、多くは起きてもらってすぐにPTM易にかかるが、この例のようにまずPTMで漢方を選び、その結果何か問題を感じた時に、改めてPTMで易に問うことがある。通常とは順序が逆になるが、このような場合もわりとある。PTM易で問題点が明らかになったほうが、漢方の選択も深いところで対応できるので、効きがいいように感じている。