”客にせがまれ夜の逸楽”
当院には花粉症とかアレルギー症状で時々来てくれている方。
もとからアトピー傾向があり皮膚がよわい。
今回も、湿疹がでて痒いと言って受診。
皮膚科で薬をもらっているが、もう一つ効きが悪いらしい。
さて、いつものように横になってもらって診ると、足の皮膚の荒れがある。
乾燥して血虚のようだ。
腹は下腹に瘀血を触る。
胸脇苦満も両側に少し認める。
それより何より、首の重たいのが目立つ。
皮膚の症状は軽いのに、全体の気の流れがわるいのが気になる。
ストレスがあるのかもしれない。
「ストレスがある?」と聞いても、とくにないと言う。
どうしてかと疑問に思ったので、
起きてもらって椅子にすわり、「気の流れのわるい原因は?」とPTMで易に聞いた。
すると「雷地豫6爻」が反応した。
「雷地豫」は楽しみの卦なので、どうしてこれが原因になるのだろうと不思議に思う。
普通、楽しいことはストレスにならないはずなのに。
そこで、手元にある三浦國雄先生の「ビギナーズ・クラシックス中国の古典 易経」に相談してみた。この本は、文庫本なので診察机の邪魔にならない。
6爻を開けて、文字を拾いながら「夜遅くまで逸楽にふける、、、、」と小声でいった時、
患者さんが「エーッ」と驚きの声を上げた。
私も、驚いて、どうした?と聞く。
そこで、彼女が説明してくれたのは、仕事はホステスさんで、最近しつこい客にせがまれて
深夜まで酒の付き合いをさせられているという。
なかなか断れなくて、連日夜の酒が続くので少し負担になっているらしい。
それだから、気のながれがわるかったのだ。
易が、直接患者さんの問題点を指摘したのには、私の方がもっと驚いた。
今後どうしたらいいのかも、続く文章に載っていた「そういう生き方をほんとうに変革したなら、災難を免れる。」と。
患者さんへのアドバイスは、まさにこの文章のとおりとなった。
「夜の享楽をへらしてね」と。
「そうしたらお肌もきれいになるよ」と。
さらにおまけに、
6爻変で「火地晋」になるので、「土からでた芽(=雷地豫)」が次には「太陽のように伸び調子(=火地晋)」になるよ、と励ましの言葉もかけた。
処方は、皮膚に効く乙字湯をPTMで選んで処方して、終了となった。
コメント
●この症例で、初めてPTM易はスゴイとわかったので、印象深く残っている。これ以降、徐々に臨床に応用して現在にいたっている。
●爻辞がこれほどあたっていることは稀で、むしろ、合わないことの方がおおい。だから爻辞は参考程度にしている。それに臨床では之卦もあまりみない。PTM易では、一つだけでなくいくつかの卦がでるので、総合して判断できるから之卦まで見なくても判断できることがおおい。
●「雷地豫」は楽しみ、喜び、などをいみする。楽しみも度が過ぎればこの症例のように、逸楽、享楽、怠惰、となるので注意が必要だ。