「艮為山」症例3:30代女性

”豚のロース”

いつも来てくれる方。
最近調子はよかったという。
前回、指示したチェストツリーでPMSは減ったという。
よかった。
しかし、昨日ひるにめまいがあったらしい。
それで心配になり当院に受診された。
めまいは稀にあるが、最近はなかった。
耳鼻科的な問題はない。
念の為にCTをとるが異常なし。
患者さんと話をしていると腹が痛くなってきた。
たぶん、この患者さんには腹痛があるのだろう。
「腹が痛くないですか?」
  「すこし下痢気味です。昨日から痛みが時々あります。」
臨床をやっていると、患者さんの症状を受けて、問題がわかることも多い。
話していないのにどうして分かるのか?と不思議がる患者さんもいる。
しかしやっていると、これもあたり前になってくる。

横になって見せていただくことにした。
脚は緊張があり、むくみもある。
腹には冷えがある、触ると奥に軽い痛みがある。
膨満気味で調子の良い腹ではない。
食べ物がわるい可能性がある。
「最近、変わったものを食べていませんか?」
  「いいえ、いつもと同じです。」
おかしい?
さらに見ていくと、背中に重たいエネルギーが入っている。
これは下の方から来ている。
下の方から来ているエネルギーは土地や動物のことが多い。
何だろうか?疑問に思う。

起きてもらって、PTM易で見てみた。
問は「下からくるエネルギーは何ですか?」と聞いてみた。
すると、「風天小畜」「雷天大壮」「天山遯」「艮為山」
などが反応した。
風天小畜なので動物が問題だ。とくに肉のことが多い。
雷天大壮は、大食いの意味がある。
多分、肉をたくさん食べている人だ。
天山遯は、逃げるという意味にとることが多いが、
たまに、遯=豚という意味で反応することがある。
すると、豚肉をたくさん食べていると予想できる。
でも、艮為山は何だろうか?
これからはわからない。
そこできいてみた。
「豚肉をたくさん食べてないですか?」
  「中華レストランで働いているので、豚肉がまかないに出ます。」
やはり、豚肉で正しい。
そこで、もうすこし連想を広げて聞いてみた。
「もしかして、チャーシューとか多くないですか?」
  「多いです。」
チャーシューは豚の肩ロースやロースで作ると聞いたことがある。
ロースは背中の肉だ。
艮為山の「艮」は背中を意味する。
だから、豚肉ロースの食べ過ぎだ。
患者さんには、肉を減らすようにいって、漢方は大建中湯などを処方して終わりとした。

コメント

●「艮為山」は止まる、停止、動かない、どっしりしている、などの意味がある。臨床ではあまり出ない卦だ

●また、卦辞に「艮其背。不獲其身。」(其の背に艮まり、其の身を獲ず。)とあるように、「艮」は背中を意味する。背中は身体の中で、耳も目も鼻もなく感覚に振り回されることがなくジッととどまっている。
豚肉のロースは背中の肉だ。だからここでは、”艮→背中→ロース”と解釈できた。