「沢水困」症例2:70代女性

”水が漏れると、尿が漏れる”

2週間に1回程度来てくれる方。
2年前、最初は足のむくみでこられたが、それは良くなっている。
それから、漢方治療で通ってこられる。
今回は腰が痛くなったという。
足のむくみも少しふえているという。
また寝ているときに左足に「こむら返り」が起こるという。

横になって見せてもらう。
確かに足のむくみはある。
でも最初の頃のように心不全を思わせるものではない。
足の腎経、膀胱経の冷えがあり腎虚を疑う。
左の膀胱経の突っ張りが目立つ。
これが腰に繋がっている。
それで腰が痛くなったのだろう。
腹診ではそれほど異常を感じない。
以前から比べると膨満はへっている、大幅に減量されているので、
心臓の負担は減少している。よかった。
気のレベルでみても、それほど悪くない。
ながれはそこそこ良い。
やっているうちに腰がすこし暖かくなってきた。

起きてもらって、対処法を考える。
腎虚があるので「八味丸」などを頭にうかべる。
同時に、なにか他にも問題がないかとおもい
手元の小型の「算木」で「この方の問題点は?」と問いかけながら
卦を初爻から上爻までくみたてる。
すると「沢水困」がでた。
しかし、気の流れもいいし、特に何かに「困」っておられる状況でもない。
体調も以前に比べてずいぶん改善してる。
何が「困」なのだろうか?
患者さんに聞いてもわからない。
ここでフット気づいたのは、「沢水困は、溜まっている水が漏れる」象だということ。
腎虚があるので、ひょっとして頻尿がないだろうか?
そこで患者さんに聞いてみた。
「おしっこが多くないですか?」
 「昼はふつう。でも夜がおおいなぁ。3回ぐらい行く。」
それだったら寝にくいだろう。
冷えたらこむら返りも起こりやすくなる。
なるほど、「困窮」とういうほどではないが、「水漏れ」はある。

漢方は予想通り「八味地黄丸」をPTMで選んで処方した。

コメント

●「沢水困」は困難、困窮、閉塞感、などを意味する。

●「沢水困」の困の字は囲いの中に木があってそとに伸びれない状況をいみする。
閉じ込められた状態などのときにこの卦はよく出る。

●今回は「沢上水下」の「沢の下に水があって漏れ出る象」から「頻尿」という病態が推測できた。文字にこだわらずに、本来の卦象から解釈することが時に大切である。