「水風井」症例3:30代男性

”作っても、作っても”

月に1回程度の頻度で来てくれる方。
最近は睡眠が浅くて熟睡できないという。
1-2回覚めてしまう。
昼も眠たくて、スッキリしない。
仕事に集中できないという。
なにか面白くなさそうな雰囲気がある。

横になって見せていただく。
足にはむくみがある。
緊張感もある。
下腹部にはひえがある。
聞いてみた。
「尿が近いのではないですか?」
  「そうですね、少し多いです。」
腹では胃が動いていない。
胸脇苦満も少しある。
頭がおもいたい。
さらに見てみると、
左の背中にすこし上の方から重たいエネルギーが入っている。
離れたところからなので、他人だろう。
すこし上の方からなので自分より上の位の人。
このようなパターンは職場の問題がおおい。
「なにか職場でストレスとかない?」
  「そうでもないです。」
「仕事は何をしています?」
  「ホテルのレストランで調理しています。」
話を聞くと、有名なホテルのレストランで働いているという。
シェフではなくて、その下の調理助手をやっているようだ。

起きてもらって投げ算木で易を立ててみた。
占的は「この方の問題はなにか?」としてみた。
すると「水風井3爻」が反応した。
「水風井」はわかりにくい卦だ。
意味は、養う、繰り返す努力、清潔にする、などだ。
わからないので3爻の爻辞を見てみた。
すると「井渫不食。爲我心惻・・・」とあった。
意味は「井戸をさらってきれいにしたのに、食べてくれない。心が痛む。・・・」。
「井」には、養う=料理をつくって出す、という意味がある。
繰り返し井戸を渫うような努力をしているのに、料理長は食べてくれない、
つまり評価してくれないのではないだろうか?
「ひょっとして、料理長はキビシイ?」
  「はい。」
「作ったものを評価してくれる。」
  「いいえ。よく怒られます。」
後ろから入っているエネルギーは料理長のものだ。
この方が努力して作っても、OKがでない。
それでへこたれている。
一流レストランで修行中の身なのでそれも仕方ないところがある。
ここは我慢して頑張るように言って、漢方は柴胡加竜骨牡蠣湯などを処方して終わりにした。

コメント

●「水風井」は、養う、綺麗にする、繰り返す努力、変わらない中心、などの意味がある。臨床ではそれほど出ない卦だ。

●今回は、卦の意味からは患者さんの状況がわからなかったので、変爻の爻辞で意味を把握するように努めた。爻辞も古代の占いの御宣宅のような、意味不明のものが多いので、そこから個々の症例に当てはまる語句や文句を見つけて、イメージを広げて類推するようにしている。
「水風井」の症例2でも同じような感じで3爻がでている。