「水山蹇」症例3:50代男性

”行くところがない”

ときどき来てくれる方。
今回は、体がだるいといってこられた。
腰もぎっくり腰になって痛くなった。
右足がときどきツルようにもなった。
夏の終わりなので、体調がととのわない。
いつもの秋の花粉症も出てきている感じがする。
仕事でも心配があるという。
来年で定年になるがまだまだ若いので、
別の会社に行くことが決まっている。
今の会社が紹介してくれた会社だ。
だから少々不安もある。
給料も安くなるといっている。

横になって見せていただくことにした。
脚は、力が低下している。
エネルギー低下だ。
ひえもある。
クーラーに当たる時間が長い。
腹は、食べれているが力がない。
夏バテがあるのかもしれない。
さらに意識を集中してみていくと、
左の肩に重たいエネルギーが来ているのがわかる。
誰か人間のように思える。
誰かと問題があるのだろうか?
「気になる人はいませんか?」
  「いいえ、いません。」

よくわからないので、起きてもらって易で見ることにする。
問は「この方に入っているエネルギーは何ですか?」とした。
すると、「水地比」「天火同人」「天水訟」「水山蹇」「火山旅」がでた。
天火同人は、友達、仲間、同僚などを意味する。
水地比は、仲が良いことをいみする。親密な関係だ。
すると、仲の良い友達か、同僚などが問題になっている可能性がある。
そこで聞いてみた。
「だれか、友達とか同僚とか、なにか問題はありませんか?」
  「特にないですけど。」
天水訟は、訴え、苦情、文句、要望などを意味する。
また聞いてみた。
「仲の良い友達とか、同僚とか、なにか訴えてきませんか?」
  「一緒に定年になる同僚が、よく愚痴をいいにきます。」
「何の愚痴ですか?」
  「次にいく会社が決まらないといっています。紹介してくれる所が良くないらしいです。」「その人と、仲がいいんでしょ?」
  「友達です。」
「その人は、行き先がまだ決まらないんですか?」
  「そうです。会社に対する文句を聞かされる。」
これで、残りの卦の意味もわかった。
火山旅は、移転、引っ越し、転職などをいみする。
ところが、水山蹇なので、足止めを食らって動けなくなっている。
転職したくても転職できない、足踏み状態だ。
だから文句がおおい、それを仲の良いこの方に訴えている。
すると、文句を聞くことになるのでこの方も疲れてくる。
友達については、ある程度のところで妥協しないと仕方ないだろう。
漢方は、夏バテに対して清暑益気湯を処方して終わりにした。

コメント

●「水山蹇」は、足止め、足踏み、進めない、などを意味する。凶を表す卦の一つだ。

●「天火同人」と「天水訟」だけが出たのなら、”この方に文句がある悪意を持っている同僚”のように受け取れるが、同時に「水地比」が出たので、”仲の良い”という意味も加えて解釈しないといけない。だから、”仲の良い同僚が、会社に対する文句をこの方に訴えている”というふうな解釈に持っていった。

●このケースでは、転職(火山旅)ができなくて、足踏み状態(水山蹇)にあるのだが、
状況によっては、足踏み状態(水山蹇)が解除されて、転職(火山旅)ができそうだ、というような場合もあるだろう。判断はケースバイケースの状況により行わないといけない。