「山沢損」症例2:40代男性

”損を深めるな”

忘れかけている頃に来てくれる方。
今回は半年ぶりだ。
どうしたの?と聞くと。
ストレスがあるという。
それで肩が凝って頭痛があり、目がつかれて、しんどいという。
食欲はそこそこある。
体力的にはイケているという。

ストレスとはなにか?
詳しく聞かずに横になって診察する。
足には緊張がめだつ。
2月なので足が冷えている。
腹は緊張がある。
胸脇苦満といっていい。
太淵に鍉鍼を当てて見てみると。
気の流れが悪い。
流そうとしてもながれない。
何が原因か?
「問題点は?」と意識して、
頭の中で初爻から上爻まで卦を組み立てていった。
すると、「山沢損」が浮かんだ。
「山沢損」がでた瞬間に患者さんの気の流れが良くなった。
それでは、なにか損害を被っているのか?
損害と言っても色々ある。
金銭、時間、身体、プライド、他の人より損な立場 etc.
「なにか損していますか?」と聞いてみた。
  「契約で、値切られている。」
仕事をくれるのはいいのだが、
請け負った仕事をやすくするように値切られているようだ。
それで、どうしようかと迷っている。
思い切って断って別に客を探すことも考えている。
理由はわかった、さてどうしたらいいのか?

起きてもらって、新たに投げ算木で易を組み立てた。
「さらに、今の状況での問題点は?」と聞いてみた。
すると、できた卦は「山地剥」だ。
これは良くない。
「剥」は剥奪、倒壊、崩れ、などを意味する。
今の注文主との関係を止めるのはよくない。
更に「損」が深まるかもしれない。
いまのところの損は我慢して、ゆくゆくは「益」に変わる可能性もあるので
しばらく様子をみるようにとアドバイスした。

漢方は、補中益気湯と川芎茶調散を処方して終わりにした。

コメント

●「山沢損」は損失、損害、を意味して臨床ではよく出る卦だ。「損」にも色々ある。金銭、時間、身体、プライド、他の人より損な立場など。意外と多いのが損な立場で自分だけ損しているというものだ。

●いままで、「売上が少ない」、「時間が損した」、「会社に損害がある」、「子どもの教育費がかかる」、「電車で物をなくした」とかたくさん出た。

●頭の中で卦を組み立てることは、算木や卦のチャートがない時にやっている。外出中とかに役に立つ。イメージの中で初爻から陰陽を見てどちらが気の流れがいいかで、下から上に順番に組み立てていく。最後に6っつの陰陽の棒を頭の中でみて卦を判断する。患者さんを診察しながらこれをやると、卦がでたときに患者さんの気のながれが一瞬で良くなる。この方法は集中力がいるので、算木を使う方が便利だ。梅花心易の一種ともいえるだろう。

●「損」と「益」は賓卦の関係にある。損したばあいは別に益を受けている人がいる。次回はその関係は逆になりうるので、それほど悪い卦でもない。