”損を深めるな”
忘れかけている頃に来てくれる方。
今回は半年ぶりだ。
どうしたの?と聞くと。
ストレスがあるという。
それで肩が凝って頭痛があり、目がつかれて、しんどいという。
食欲はそこそこある。
体力的にはイケているという。
ストレスとはなにか?
詳しく聞かずに横になって診察する。
足には緊張がめだつ。
2月なので足が冷えている。
腹は緊張がある。
胸脇苦満といっていい。
太淵に鍉鍼を当てて見てみると。
気の流れが悪い。
流そうとしてもながれない。
何が原因か?
「問題点は?」と意識して、
頭の中で初爻から上爻まで卦を組み立てていった。
すると、「山沢損」が浮かんだ。
「山沢損」がでた瞬間に患者さんの気の流れが良くなった。
それでは、なにか損害を被っているのか?
損害と言っても色々ある。
金銭、時間、身体、プライド、他の人より損な立場 etc.
「なにか損していますか?」と聞いてみた。
「契約で、値切られている。」
仕事をくれるのはいいのだが、
請け負った仕事をやすくするように値切られているようだ。
それで、どうしようかと迷っている。
思い切って断って別に客を探すことも考えている。
理由はわかった、さてどうしたらいいのか?
起きてもらって、新たに投げ算木で易を組み立てた。
「さらに、今の状況での問題点は?」と聞いてみた。
すると、できた卦は「山地剥」だ。
これは良くない。
「剥」は剥奪、倒壊、崩れ、などを意味する。
今の注文主との関係を止めるのはよくない。
更に「損」が深まるかもしれない。
いまのところの損は我慢して、ゆくゆくは「益」に変わる可能性もあるので
しばらく様子をみるようにとアドバイスした。
漢方は、補中益気湯と川芎茶調散を処方して終わりにした。
コメント
●「山沢損」は損失、損害、を意味して臨床ではよく出る卦だ。「損」にも色々ある。金銭、時間、身体、プライド、他の人より損な立場など。意外と多いのが損な立場で自分だけ損しているというものだ。
●いままで、「売上が少ない」、「時間が損した」、「会社に損害がある」、「子どもの教育費がかかる」、「電車で物をなくした」とかたくさん出た。
●頭の中で卦を組み立てることは、算木や卦のチャートがない時にやっている。外出中とかに役に立つ。イメージの中で初爻から陰陽を見てどちらが気の流れがいいかで、下から上に順番に組み立てていく。最後に6っつの陰陽の棒を頭の中でみて卦を判断する。患者さんを診察しながらこれをやると、卦がでたときに患者さんの気のながれが一瞬で良くなる。この方法は集中力がいるので、算木を使う方が便利だ。梅花心易の一種ともいえるだろう。
●「損」と「益」は賓卦の関係にある。損したばあいは別に益を受けている人がいる。次回はその関係は逆になりうるので、それほど悪い卦でもない。