「山沢損」症例1:20代男性

”損する会社に居ておれぬ”

もともと頭痛持ちでないが3月前から頭痛がでてきて、最近は毎日頭がいたいという。
話を聞くと、3月前に大幅な人事移動があり仕事がとてもいそがしくなったという。
処理する仕事の量がふえて、イライラが続く。
仕事を回してくる上司にも腹が立つという。プレッシャーが大きいと。
それなら、ストレスが原因で緊張型の頭痛がおこったのだろうと推測して
患者さんには横になってもらって診察をする。

足には緊張があり、中に熱がこもる。
腹も緊張している。胸脇苦満も両側にみとめる。
首が重たい、考えることが多いのだろう。
目も重たいのもストレスのせいだろうと考えた。

起きてもらって、椅子にすわってもらいPTM易で「何が問題か?」と問う。
当然ストレスがあるのはわかるのだが、それが上司との関係か、仕事環境が悪いのか、疲労の蓄積か、家庭の問題か、別に要因が隠れていることがあるので、PTM易で本質を捕まえようとこころみた。

すると「山沢損」が反応した。
「損」なので、なにが損をしているのか?と疑問に思う。
以前診たひとは、”仕事で忙しすぎて自分の時間がなくなって”「損」した感じを持っていた。
この方もそうだろうかと、「仕事が忙しすぎて趣味とかできないですか?」と聞いてみる。
すると「趣味は特にないし、奥さんと一緒の時間が減ってこまる」程度だとおっしゃる。
そこまで「損」の感じをもってない。
それでは別の「損」だろうか?
そこで「会社が損してませんか?損害とか損失とか?」と聞いてみた。
すると、急に真顔になって「会社が危ないんです。赤字続きで。それで皆がイライラして売上をあげようと業務が増えている。」と言ってくれた。
さらに、「本当は、辞めようと思っています」とも付け加えた。

仕事量が多いことの以前に会社の経営の問題があったのだ。
この方は、辞めるか辞めないかで迷っているし、上司も機嫌が悪いし、仕事量が多いし、頭痛がでてきて当然の状況だといえる。

まだ若いので危ない会社からは離れたほうがいいかもしれない、とアドバイスして
漢方はPTMで、怒りを収める「抑肝散陳皮半夏」と、考えすぎに効く「酸棗仁湯」を処方して、終了とした。

コメント

●「山沢損」は何かが損する状態で多く出る卦だ。損害、損失、紛失、時間の損、お金の損、人によって色々の損がありうるので、問診で聞かないとわからない。

●「山沢損」は本来の意味は「損して得をとれ」のように、損をプラスに取ることがおおいのだが、単に問題点を聞いたときは、現状の損失の状況が浮かび上がる。

●漢方について説明すると、抑肝散加陳皮半夏(抑肝散も)は怒りをしずめ、酸棗仁湯は考え過ぎの頭を冷やしてくれる。