「山地剥」症例3:80代男性

”手術はキビシイ?”

当院に来られている奥様が、ご主人を連れてこられた。
話を聞くと、近くの大きな病院で胸のレントゲンを撮ったら、
白い影が見つかったという。
それが3月後には少し大きくなっている。
CT、MRIなどを受けて、
さらには気管支鏡もやったらしい。
でも、組織はとれず、肺がんとは確定できなかったようだ。
医師は「グレイ」と言いながらも手術を勧めているが、ご主人は以前の腸の手術の後遺症で苦しんだので、手術というものに拒否感がある。
さらに、糖尿があり、狭心症のステントまで入っている。
たくさんの薬をのんでいる。
奥さんも、ご主人にこのまま手術を受けさせると、
手術の後、弱ってしまうのではないかと心配している。
主治医には手術は受けたくないと言ったようだ。
それでも迷いがあるので、私のところに相談に来たようだ。
紹介状がないので、細かいことは不明。
データが無い上に、私は全くの専門外なので、アドバイスをどうしたらいいのか迷ってしまう。

とりあえず、横になってもらい見せていただいた。
足は、筋の突っ張り感がある。腎虚が軽度。
腹は膨満して食べ過ぎだ。
さらに見ていくと、頭が重たい感じを受ける。
話をしても返事がノロい、ごく初期の認知症もある可能性がある。
起きるのも、ゆっくりした動作だ。

座ってもらい、投げ算木で易を組み立ててみた。
最初の問は「手術をするとどうなるか?」とした。
すると、「山地剥」が出た。
次の問は「手術をしないとどうなるか?」とした。
すると、「地天泰」が出た。
最初の、山地剥は、崩壊、剥奪、などをいみする。
とくに、初爻から5爻までが陰なので最後の陽を支える力が弱い。
ちょっとした衝撃で潰れてしまう恐れがある。
多分、手術には耐えられないだろう。
次の、地天泰は、安泰、健康を意味する卦だ。
上下の気が交流して安定を意味する。
老人の病気を占って地天泰がでた時は良くないことがあるといわれるが、
それでも山地剥よりましだろう。
だから、今回は、手術を見合わせたほうがいいのではないだろうか、と話しした。
そのほうが、御本人と奥様の意向にも沿うことにもなる。
奥様は半年後に再検査を受けると言っていたが、それは無謀なので、
また1月後にはレントゲンなどの検査を受けるようにと勧めた。
漢方は、八味地黄丸と桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方して終了とした。

コメント

●「山地剥」は剥離、剥奪、倒壊、崩壊、などをいみする。危機的状況で悪い意味が多い。

●データもないし、紹介状もないし、そのような状況で患者さんが相談に来られることがある。自分の専門でもないし、客観的なアドバイスはできない。しかし、今回のように患者さんの多くはすでに方針を決めている。それに対して裏付けや後押しがほしいという場合がある。そのようなときには易は有用であるような気がする。
 もし、患者さんの意向に反するような易の結果が出た場合はどうするか?その場合も、あくまで主観的な意見として、易の結果に沿った形の対応を勧めるだろうと思う。
 しかし基本的な方針としては、易は示唆をくれるが、行動するのは本人であり責任をとるのも本人になる。