「山地剥」症例2:60代女性

”膝が悪いとコケルよ”

1年ぶりに来院。
以前からときどき頭痛があり、それはあまり変わっていない。
今回は、体がだるいと言ってこられた。
だるさにも色々あるので、詳しく聞いてみた。
「だるいって、どんなにだるいんですか?」
  「身体が重い感じがする」
「何をすると重いんですか?」
  「動くと重い」
「どこが重いんですか?」
  「足とか腰とか、息もしんどい」
確かに身長の割には体重がありそうだ。
身長は150cm程度だが、体重はと聞くと、70kgだという。
それでは重くなって当然だ。
BMIは31で高度肥満だ。
内科ではウルソ、エソメプラゾール、モサプリドクエンサン、アトルバスタチン、ノルバスク、ジャヌビアなど沢山クスリを飲んでいる。

そこで横になてもらい診察した。
足は、むくみがあり瘀血もある。
しかし体重の割には足は太っていない。
触ると膝が良くないのがわかる。
内側の関節面が変形しかけている。
変形性膝関節症に将来なる可能性がある。
とくに太っていると膝に負担がかかる。
「歩くと膝が痛くないですか?」と聞いてみた。
  「階段を降りる時に右の膝が最近痛む」と答える。
腹は膨満して明らかな食べ過ぎ。
内臓脂肪が著明だ。
肝臓も腫れて、典型的な脂肪肝になっている。
更に、太淵に接触鍼をして見てみると呼吸が苦しい。
心臓に負担がかかっている。
早急に痩せないと、身体がもたない。

起きてもらって検討した。
高血圧、胆石、脂肪肝、高脂血症、慢性胃炎、糖尿病などいろいろな問題があるので
「一番の問題点はなにか?」と易で聞いてみた。
今回は算木を下から組み立てて卦を出した。
すると「山地剥2爻」が出た。
山地剥は”剥奪、剥離、転倒、倒壊、転落、悪化急変”などを意味する。
あまりよくない卦だ。
いろいろ問題があるので、どれが悪化急変してもおかしくない。
しかし、転倒、コケルとなると、物理的に倒れる事はどうだろうか?
診察では膝が悪いのがわかった。
階段の上り下りが辛そうだ。
変爻の「2爻」はというと、この位置は人体の「膝」をあらわす。
ということは山地剥は”膝がわるいのでコケル危険性がある。”
あるいは、”膝が急変して悪くなる可能性がある。”と解釈できる。
膝のことを患者さんに聞くと、母も叔母も膝が悪かったという。
自分も膝が悪化しているのを自覚している。
それならば、なおさら痩せなければいけない。
太ると膝に負担がかかるので動けなくなり、更に太る。
悪循環にはいる。
この点を患者さんにアドバイスした。

内科的治療はすでに受けているので、当院では膝にたいして防已黄耆湯を処方して終わりにした。

コメント

●「山地剥」は、剥離、剥奪、剥落、転倒、崩壊、急性悪化などを意味する。

●臨床的には急に悪くなる危険があるときにでやすい。

●卦の爻の位置に身体の場所を対応させて問題部分を探るという方法がある。1爻は足、2爻は膝、3爻は股腰、4爻は腹、2爻は胸、1爻は頭に大まかに対応する。もちろん顔~頭の問題を聞いたときは1~6に下顎~髪を対応させることができる。問題とする状況次第で変わりうる。