「坎為水」症例3:40代女性

”可哀想な犬”

月に1-2回頭痛があると、言ってこられた方。
別の患者さんからの紹介。
頭痛は曇りの時に多いので片頭痛でいいだろう。
前兆はなく、頻度も少ないので、普通のトリプタンの頭痛薬でいいだろう。
しかし、患者さんから受ける気の感覚では頭痛以外にも問題がありそうだ。
何かイライラ感を感じる。

横になって診察させてもらう。
足には浮腫がある。
少し皮膚が荒れているのでアレルギーがあるように思われる。
脚の肝経は緊張している。
腹は下腹部が冷えている、腰にも冷えがある。
胸脇苦満も認める。
太淵に鍉鍼を当てて全身をみると、
鼻がつまり気味なのがわかる。
首も重たい。
さらに意識を集中して、外から来ているエネルギーを見ていくと
右下から重たいエネルギーが入っている。
下からくるものは動物が多いので、聞いてみた。
「ペットとか飼っていませんか?」
  「いいえ、動物はかっていませんね。」(おかしい、なにか居るはずだが)
「それじゃ、家の周りに動物はいませんか?野良猫とか。。」
(時々、野良猫が悪影響を与えることを経験している)
  「そうですね、馬鹿犬がいます。」
「馬鹿犬?馬と鹿と犬ですか?」
  「えっ。。?」(私の冗談は通じなかったようだ (。>﹏<。))
「え~っと、犬が問題なんですね?」
  「そうです、隣の犬が吠えて、うるさくて、うちではバカ犬と呼んでいるんです。」
「そうですか。。。」
とりあえず、右下からくる重たいエネルギーが犬だとわかった。

そこで起きてもらって、PTM易でさらに詳しく見てみた。
占的は「それはどんな犬ですか?」と聞いてみた。
すると、「風天小畜」「天雷无妄」が反応。これは予想通りだ。
小畜は小さな動物をいみする。无妄は自然のものなので動植物に対応する。
つぎには、「山火賁」が反応する。賁は怒りを意味することが多いので、犬は何かに怒っているようだ。
さらに見ていくと、「天火同人」「坎為水」「水山蹇」「沢水困」が反応した。
これは何だろうか?
同人は人なので、犬と重なって来ていることを見ると、飼い主だろう。
あとの3つの卦は何か?
坎為水は、穴に落ち込んでニッチモサッチいかない状態、
水山蹇は、進みたくても進めない、動けない状態、
沢水困は、閉じ込められて困窮している状態を意味する。
これから、”飼い主が犬を閉じ込めて虐待している可能性”が浮かんできた。
「犬は、庭に出てきますか?」
  「いえ、塀があるので見えない。」
「ひょっとして、鎖に繋がれて閉じ込められていませんか?」
  「わかりません。鳴き声は同じ方向から聞こえてくるし、自由には動いてないようですね。それに、飼い主の怒鳴り声も聞こえたことがありました。」
「やっぱり、それは虐待ですよ。だからバカ犬ではなくてアワレな犬ですよ。」
  「そうですか。。そういえば散歩につれて行くのも見たことありません。」
この段階で、患者さんの重たい気は軽くなってきた。
いままではウルサイだけのバカ犬と思っていたのが、実は可哀想な犬だと認識が変わったからだ。認識が変わると、気分も変わる。
そこで改めて、PTMで漢方を選んだ。すると五苓散と抑肝散が反応。五苓散は片頭痛に効くし、抑肝散はイライラに効いてくれる。
加えて、頭痛時にはリザトリプタンを屯用で処方して終わりとした。

コメント

●「坎為水」は、穴に陥る、でれない、危険に直面、などで出ることがある。

●今回は「坎為水」「水山蹇」「沢水困」の3大凶卦が揃った。このようなことも珍しい。だからいかに犬がひどい状態にあるかが予想できる。場合によっては、地方自治体の介入が必要になる事例かもしれない。

●患者さんは犬がバカだから理由もなく吠えまくっていると思っていたようだ。しかし、その実は虐待が裏にありそうだとわかった。その結果、犬に対してすこし思いやりがでてきたようだ。すると、いままでのストレス感が緩和された。認知が変わると反応も変わる。易は認知療法にも使えるかもしれない。