”高く昇ると高所がこわい?”
大学4年の女性。大阪の大学で薬学部に行っている。
当院には、時々来られる方。
今回は、試験前に体調を整えたいと行ってこられた。
少し疲れがあるらしい。
それと寝付きが悪くなっているという。
横になってもらって、診察した。
足はすこし冷えがある。
血虚気味の皮膚のようにおもえる。
腹はガスがおおい、すこしはっている。
食べれるが、胃の動きは順調ではない。
肝はそれほど疲れていない。
喉がすこしつまり気味で、のぼせて頭がおもい。
試験前なので、考えることが多くてノボセているのだろうか?
気の流れは、それほどよくない。
試験以外に原因があるかもしれない。
そこで、ちなみに、聞いてみた「試験は何の試験?」
「応用合成化学の試験です。」
「なんか、難しそうだなー、すごいね。」
「そう、難しくて。なかなかついて行けない」
「でも、薬学が好きなんでしょ?」
「そう、実験がすきで、薬学部にはいった。」
「スゴイね。」実験がにがてな私としてはスゴイとおもう。
何が問題なのだろうか?勉強は嫌いでないと言うのに。
そこで起きて座ってもらいPTM易で「何が問題か?」と聞いてみた。
すると「地風升」と「雷山小過」が反応した。
これはどう意味か?すぐにはわからなかった。
「地風升」は”昇る、上がる、昇進する、進級する”などを意味して悪い卦ではない。
通常は”上り調子”の時によく出る卦だ。
でも「問題点」を聞いたので、なにか悪い面があるはずだ。
まず、周りの人にヨイことがあると、当人にとって妬みが起こることがある
だから聞いてみた。「誰か昇進したとか、評価が上がったとか、周りの人でいいことがない?」。
でも、「ない」という。
つぎに「あなたの何かが増えたとか、上昇したとかして困ったことはない?」
これも、「ない」という。
さらに、卒業を「升」ととって「単位が足らなくて、卒業できないということもない?」
単位は十分に「ある」という。
4年生なので就職に関係することかとおもって、「就職とかで問題はない?」。
すると、「大学院に進みたいけど、試験が難しいし。。」と答えた。
ここで、2つの卦の意味が了解できた。
「地風升」は”大学院に上がること”、そして「雷山小過」は”すこし荷が重い”と言う事だ。
もうじき、大学院の入試があるので、それが難しいので、それで悩んでいるのだ。
直前の試験より頭を悩ませているのは、大学院入試のことだった。
でも、「小過」だから、努力すれば突破できるはず。勉強が好きな人なので、もう少し頑張るようにと励ました。
漢方は疲れに対してPTMで「当帰建中湯」を選んで、処方して、終了とした。
コメント
●「地風升」は、上昇、昇進、昇給、高くなる、繁栄する、などの良い意味をもつ。
だから、臨床ではでにくい卦だ。かつて経験したのは「店が上り調子だが、従業員はやめていく」という意味で出たことがあった。
●「雷山小過」は、すこし超過、少しオーバー、少し超える(越える)、時間をこえる、などの意味がある。この卦は他の卦と一緒に出て患者さんの問題点を示してくれる。頻回に出てくる卦だ。臨床で、一番多いのは「食べ過ぎ」として表れる。
●「当帰建中湯」は建中湯類のなかでもよく使う漢方だ。「小建中湯」「黄耆建中湯」に比べて疲れが少ない。とくに女性にいいが、男性でもよく使う。