「地天泰」症例2:70代女性

”安住して婚期を逃す”

月に1回程度来てくれている患者さん。
調子は、わるくないという。
3月だがまだ冷えをかじるという。
それはそうだ、まだ桜もさいていない。
でも、全体的にはそれほど悪くなさそうだ。
しかし、顔を見ると頭に靄がかかっているかんじがする。
私までボーっとしてきた。
これはなにか?

横になってもらい診察する。
足にはひえがある。
腹は少し虚になっている。
胸脇苦満はすこしあるていど。
鍉鍼をしてみると、気の流れが取れない。
ストレスがあるのか?
ボーっとしているということは、
心配事で考えすぎているのかもしれない。
「なにか心配とかないですか?」と聞いてみた。
すると「娘のことで。。。家にいるので。」と、おっしゃる。
娘の何が問題か???
家にいると困ることがあるのか??
娘と仲が悪いのだろうか??いろいろ疑問が湧く。

起きてもらって、PTMで易を見てみた。
「娘さんに関する問題点は?」と問いを立てた。
すると、「地天泰」「沢風大過」「火水未済」が出た。
地天泰は安泰という意味。多くの場合とてもいい卦だ。
でも、今回は問題点を聞いてる。
安泰すぎるのが問題なのか?
「家は、居心地がいいのではないですか?だから出ていかない?」
  「そうなんです。早く結婚すればいいのに。」
そうか、娘が家にいて結婚しないのが心配なのだ。
そうすると「沢風大過」は婚期が過ぎていることを意味する。
「何歳ですか?」
  「今年で39になります。」
確かに、いまから結婚しても子供はできにくいかもしれない。。
すると「火水未済」は、母としては娘が片付いていないことを意味する。
状況はわかった。

どうするか?とりあえず、家が居心地が良すぎるので、母があまり面倒を見ないようにして、早く出ていくように言うしか方法がないだろう。
漢方は「酸棗仁湯」を処方して終了とした。

コメント

●「地天泰」は、安定、安泰、泰然、健康などを意味する。だから病気を主に診る臨床ではほとんどでない。でもこの例のように、「泰」から動くとき、ズレていくときにはでることがある。

●「地天泰」の裏の卦には「天地否」がある。「天地否」は、塞がり、閉塞、停滞、不通などの凶の意味がある。易は”変化”を重視するので、この2つの卦はお互いを可能性として含む。陽が陰を宿し、陰が陽を宿すというのと全く同じだ。今回は、まだ「泰」の状態だったので、治療に反応する可能性がある。「否」になると良くない。

●PTMで漢方が十分に反応しないことがある、その時は西洋薬をつかうべきだ。場合によってはハーブとかホメオパシーのレメディーということもある。これらすべてPTMで選択できる。だからウチの処方は多くは漢方だが、西洋薬も組み合わせることが一般的だ。漢方にこだわって、大量の煎じ薬を処方することはない。