乾の徳は中心に柱をたてる。地から天に竜は昇る
頭痛で来られている方。
2ヶ月まえに初診。頭痛は片頭痛の薬と漢方を処方してよくなった。
2週間前に再診されて、その時は不眠が主訴。
寝ようとすると、不安になってねれない。
過去や昼間のストレス状況を思い出して寝れないと。
その時に、PTM易で初めて「乾為天」が反応した。
問題点を聞いているのだが、「乾為天」を触っていると、頭がスカッとして腰のだるさが取れて、この卦が治療に使えるのではないかと、初めて気づいた。
漢方は「抑肝散加陳皮半夏」と「酸棗仁湯」を処方した。
今回、2週間ぶりに来られて、言うには、「寝れるようになった」と。
昼間や過去の嫌なことを思い出すのは減ったという。
漢方は効いている。
横になってもらい診察に入った。
足は緊張して肝経が実になっている。ストレス状況はありそうだ。
腹は、下腹にガスがたまり気味。やや胃腸の動きが悪い。
胸脇苦満も軽度両方に認める。
腰がだるい、身体の中心がしっかりしていない印象がある。
寝ている間にトイレに1回は行くという。
若い人にしては珍しい。腎虚があるのか。
右手首の太淵に接触鍼を当てて全体の気の流れをみると、首がおもい。
頭もすっきりしない。
このときに、前回「乾為天」が反応したのを思い出して、全身の気の流れをみながら
この卦をイメージしてみた。
すると、患者さんの頭が通りだして、気の流れが良くなるのがわかった。
やっぱり、「乾為天」は、治療に使えるのではないだろうか?
そこで、起きてもらい、椅子に掛けてもらってPTM易で「問題点は」と聞いた。
同時に「乾為天」が使えるかどうかも意識して、PTM易を行った。
すると、「乾為天」に加えて「山水蒙」、「天下同人」、「地天泰」、が反応した。
「天下同人」は同僚のことだろう。
同僚で問題がないかと聞くと、腹が立つ人がいるという。
この卦はその人のことを表すのだろう。
「地天泰」は本来、安泰、健康を意味するが、問題点を聞いたときは、健康からのズレ、特に上下の気の交流が悪くなっているときに出やすい。
だから、この方は上下の気の流れが悪いと思われる。
「山水蒙」は、物事を理解してないときに出る。
この人の場合は、過去の嫌な思い出に囚われていることを示している。
過去のことにとらわれると目先が見えずに蒙になる。
さて、そしていよいよ「乾為天」が使えるかどうか、試してみた。
PTMをしながら「乾為天」に指を当てていると、だんだんと、腰から頭にかけて
体の中心に力が出てくるのが感じられた。
患者さんも同時に同じ感覚をもつ。
不安定だった腰が整い、動きが悪かった肩甲骨の真ん中の背骨が暖かくなり、次第に頭のてっぺんがスッとして、軽い気は頭から抜けて、重たい気は腰の方に降りていった。
まさに、身体の中心に一本のしっかりした柱がたった感じになった。
この柱は、地から天に立つので、ブレることはない。
「乾為天」の竜はこの柱を通って、天に昇る。
こうしていると、不安定だった患者さんの身体と気持ちも落ち着いてきた。
やっぱり、この卦は治療につかえるのだ。
問題点がわかり、気が整ったので、PTMで漢方を選んでみた。今回は「抑肝散加陳皮半夏」と「当帰建中湯」が反応したので、これらを処方して、終了とした。
コメント
●「乾為天」は、剛健、高大、偉大、意気軒昂、自信過剰、などを意味する。
臨床ではいままで出なかったので、何を意味するのか分からなかった。
この症例ではじめて、PTM易での意味するところが理解できた。
●純陰の「坤為地」で書いたように、「乾為天」が示す純陽の事象は人間世界には本来ないのではないか。
だから、PTM易ではいままで出なかった。でも、見方をかえて、身体の芯に柱が通った理想的な状態に持っていくものとして、この卦を治療につかえるのではないかと気づいた。そして実際にPTM易をしていると、気は身体の中心を流れるようになった。
●身体の中心に柱が立つと、少しのことではブレなくなる。それも、地の気と天の気が交流しだすと、へこたれなくなる。地の気が天に昇るのは”竜”が上昇するイメージだ。また、ヨガで言う”クンダリーニ=蛇”が背骨を上昇するイメージとも重なる。さらに、西洋マジックの”ミドルピラー”ともイメージが重なる。
これらはすべて理想的な状態なので、普通では達成することはできない。
だから、理想状態からずれている現実に、この卦を象徴として理想に近づけるために使うことができるのではないだろうか。