「 地火明夷」症例1:30代男性

”じっと我慢、正しいことでも口出すな”

 半年ぶりに受診。
今回は頭痛薬がなくなったと言ってこられた
頭痛の頻度も多くないので、いつものようにリザトリプタンを処方して終わろうと思った時に、
「漢方も、、」とおっしゃった。
どうしたのかと思って話を聞くと、会社でストレスがあるという。
心療内科から抗うつ剤の「エスシタロプラム」が処方されている。
会社のストレスとは何か?疑問におもう。
でも、とくに具体的なことは話してくれない。

 そこで横になってもらって、診察にかかる。
いつものように足から診ていく。
足には緊張がある、胃経と肝経など全体的に緊張が強い。
腹に移り腹診をする。
腹直筋をふくめて全体的に緊張がある。
自律神経の緊張だろう。
右手の「太淵」に接触鍼を当てて、全体の気の流れを見る。
すると、首が重いことがわかる。
喉のつまり感もある。
流れが全体的に良くない。どんよりしている。
 
 起きてもらい、座ってもらいPTMで易に「何が問題か?」と聞いてみた。
すると、「地火明夷1爻」が反応した。
「地火明夷」は、”太陽が地下に隠れる象”だ。
だから、暗い、正しいことが通じない、不遇、などの意味がある。そこで、聞いてみた。
「何か、会社で不遇でない?」
  「不遇って?」
「まともな人が、正しい人が、浮かばれないとかないですか?」
  「まあ、自分ではわからないけど。。。」
「上司に、正しいことを言ってしまって、それで待遇が悪くなった、とか?」
  「半年前にありました。それでストレスが増えた。」
「シマッタっていう感じ?」
  「そうです。怒らせたみたいです。」
更に話をきくと、10人程度の小さな会社で、手続きの改善について社長に言ったようだ。
それに対して社長が腹が立ったのか、その後から扱いが冷たくなった。
それがこの半年間ストレスになっている。
1爻だから、まだまだ、太陽が地下から出るには時間がかかるだろう。
また、辞めるにもやめられない状態だろう。
ここは、ジット我慢するするしかない。
そのように患者さんにはアドバイスした。

 漢方はPTMで「補中益気湯」を選んで、「リザトリプタン」とともに処方して、
今回は終了とした。

コメント

●「地火明夷」は、暗い、夜の闇、周りが愚蒙、不遇、などを意味する。
地下に太陽が落ちたイメージだ。今までの臨床では「学校で自分は真面目にやっているが他の子は不真面目だ」、「子供の結婚の話が親戚の反対でストップしている」とかのケースで出たことがある。

●この卦が出た時は、地下に落ち込んでいるので動きが取れない。でも「坎為水」のような険難とは違う。この卦の意味するところは、本来「離(火)」の明知をもつ人が不遇なので、最終的には不遇状態から脱出する可能性がある。
だから、クサラないで愚痴をこぼさずに、正しい道を堅持して我慢する必要がある。

●ウチのように頭痛と漢方を専門にしていても、来る患者さんで心療内科の薬を飲んでいる人が沢山いる。不眠、鬱、不安、パニック、統合失調症、ADHDと多彩だ。でも、PTMで診て見ると薬があっていないことがある。とくに、大人のADHDを見逃している事がわりとある。PTMがもっと広まれば診断の助けになるのにと思ってしまう。