「雷火豊」症例4:50代男性

”昼に痰が出る”

月に1回程度来てくれる方。
漢方以外に、
高脂血症がありクレストールを処方している。
体調はとくにわるくないという。
暑さが続くわりには元気だという。
熱中症にならないように水分を補給している。
食欲もある。

横になって見せていただく。
足は少しむくんでいる。
冷えがある。
腰にもひえがある。
水分が多いと下半身がひえやすい。
腹は、やや腎虚だ。
胸脇苦満は認めない。
太淵に鍉鍼をあてて意識を集中すると、
のどのイガイガ感を感じる。
首がおもい。
鼻もつまり気味だ。
もう秋になるので花粉がでてきたのだろうか?

起きてもらって座ってもらう。
処方する前に、投げ算木で易を立ててみた。
問は「この方の問題は?」としてみた。
すると、「雷火豊」3爻が出た。
「雷火豊」は、豊か、豊富、お金持ち、などを意味する。
”豊か”では、問題点にならない。
また「雷火豊」は臨床では”お菓子”を意味することがある。
そこで聞いてみた。
「最近、甘いものとかお菓子が多くないですか?」
  「いいえ、食べません。」
お菓子でないとすると、もっと別に考えないといけない。
3爻の爻辞をみてみた。
そこには「豊其沛。日中見沫。」とあった。
訓読みは「そのはいをおおいにす。にっちゅうまいをみる。」だ。
成書では「沛」は天幕、「沫」は星くず、と説明されている。
しかし、漢字から瞬時に連想したのは、「沛→肺」「沫→泡沫→痰」だ。
痰が多いのではないだろうか?
そういえば、この方はタバコを1日20本以上吸っている。
「最近、昼間に痰が多くないですか?」
  「そうですね、何かのひょうしに急に出ます。」
「タバコは吸っていますか?」
  「やめれないなー」
すると、問題はタバコによる肺の障害だ。
タバコは10本に減らすように言って、漢方は清肺湯を処方して終わりとした。

コメント

●「雷火豊」は、豊か、豊富、お金持ち、盛大などの意味がある。
臨床では”お菓子”の食べ過ぎのときに出ることがある。

●この例のように、卦の象から答えがわからない時は、爻辞をみる。
爻辞は意味不明の漢字が並んでいることがあるが、そこから連想を働かせて正解にアプローチしていく。
易は3000年まえから筆写されて引き継がれてきたのだから、その間、漢字の写し間違いもあるだろう。また、漢字の意味も時代によって変化していっている。だから、眼の前の漢字そのものにこだわらずに、想像の翼を広げて、占的にあった意味を探っていくのがいいように思う。