”昼に痰が出る”
月に1回程度来てくれる方。
漢方以外に、
高脂血症がありクレストールを処方している。
体調はとくにわるくないという。
暑さが続くわりには元気だという。
熱中症にならないように水分を補給している。
食欲もある。
横になって見せていただく。
足は少しむくんでいる。
冷えがある。
腰にもひえがある。
水分が多いと下半身がひえやすい。
腹は、やや腎虚だ。
胸脇苦満は認めない。
太淵に鍉鍼をあてて意識を集中すると、
のどのイガイガ感を感じる。
首がおもい。
鼻もつまり気味だ。
もう秋になるので花粉がでてきたのだろうか?
起きてもらって座ってもらう。
処方する前に、投げ算木で易を立ててみた。
問は「この方の問題は?」としてみた。
すると、「雷火豊」3爻が出た。
「雷火豊」は、豊か、豊富、お金持ち、などを意味する。
”豊か”では、問題点にならない。
また「雷火豊」は臨床では”お菓子”を意味することがある。
そこで聞いてみた。
「最近、甘いものとかお菓子が多くないですか?」
「いいえ、食べません。」
お菓子でないとすると、もっと別に考えないといけない。
3爻の爻辞をみてみた。
そこには「豊其沛。日中見沫。」とあった。
訓読みは「そのはいをおおいにす。にっちゅうまいをみる。」だ。
成書では「沛」は天幕、「沫」は星くず、と説明されている。
しかし、漢字から瞬時に連想したのは、「沛→肺」「沫→泡沫→痰」だ。
痰が多いのではないだろうか?
そういえば、この方はタバコを1日20本以上吸っている。
「最近、昼間に痰が多くないですか?」
「そうですね、何かのひょうしに急に出ます。」
「タバコは吸っていますか?」
「やめれないなー」
すると、問題はタバコによる肺の障害だ。
タバコは10本に減らすように言って、漢方は清肺湯を処方して終わりとした。
コメント
●「雷火豊」は、豊か、豊富、お金持ち、盛大などの意味がある。
臨床では”お菓子”の食べ過ぎのときに出ることがある。
●この例のように、卦の象から答えがわからない時は、爻辞をみる。
爻辞は意味不明の漢字が並んでいることがあるが、そこから連想を働かせて正解にアプローチしていく。
易は3000年まえから筆写されて引き継がれてきたのだから、その間、漢字の写し間違いもあるだろう。また、漢字の意味も時代によって変化していっている。だから、眼の前の漢字そのものにこだわらずに、想像の翼を広げて、占的にあった意味を探っていくのがいいように思う。