”ニギヤカな東京”
2年ぶりに来られた方。
東京の大学を卒業して東京のテレビ局に就職している。
ときどき実家の淡路島にかえったときに当院によってくれる。
今回は、頭痛があるという。
目の奥が痛くなって、それが頭痛になる。
仕事は忙しいという。
報道関係の担当をしている。
さて、横になってもらって診察した。
足には緊張がある。
腹は、下腹が張っていて触ると少し痛い。
朝には下痢が多いという。
食欲はあるが、たべるとすぐに胃がいっぱいになる。
胸脇苦満も両側に軽度みとめる。
頭に熱がこもって暑い。
気の流れはそれほど良くない。
ストレスがあるのだろう。
体力はもっているが、でも何かが順調でない。
流れが悪い原因はなにか?
起きてもらって、PTMで易を見てみた。
すると「山水蒙」「天水訟」「天火同人」
「山火賁」「雷火豊」が反応した。
「訟」は訴え、文句、要求を意味する。何か訴えたいことがあるのか?
「賁」は、臨床では怒りを意味することが多い。
なにかに怒っているのか?
普通は別の人に苦情や怒りがあるので「天火同人」は外卦が反応するのだが、
この方の場合は内卦が反応する。
内卦は”自分”を意味する。これは変だ。
自分に腹が立っているのか?
「なにか、誰かに、腹が立っている?」
「そんな事はありません。仲良くやっている。」
「ひょっとして、自分に腹が立つ?」
「それはあるかも。」
どうして自分に腹が立つのか、聞いてみた。
テレビ局の仕事は忙しくて、賑やかで、人がいっぱいで、憧れていたが、
就職して4年になるけど、疲れがたまってきた。
本当は実家のような田舎で住むのが合っているような気がする。
無理やり人に合わせている自分が嫌になってきた。
どうしていいのかと迷い始めている。
考えることが多くて頭痛がふえている。
「蒙」は、先が見えない、見通せない、ボーっとしている、などを意味するので、
今の状況を示すのだろう。
また「雷火豊」は賑やか、華やか、豊か、騒々しいなどを意味する。
面白いのはこの卦の3爻と4爻の間で反応がある。
内卦は自分、外卦は相手、3と4爻の間は自分と相手の間に相当する。
つまり、自分と相手の関係であり、属する環境とみていい。
この人のいる環境は、東京であり、テレビ局であり、賑やかすぎるのだろう。
そのような華やかなところが自分に合っていないことがわかってきたようだ。
田舎で転職することもかんがえてもいいのではないだろうか。
そのようにアドバイスした。
今回は、考えすぎに対して酸棗仁湯を処方して終了とした。
コメント
●「雷火豊」は豊か、金持ち、などを意味するが。うるさい、騒々しい、賑やか、けばけばしいなども臨床的にはよく出る。
●更によく出るのが、甘い物、お菓子の食べ過ぎでこの卦が反応する。甘いものは豊かさの象徴だからだろうか。
●「内卦」は自分、「外卦」は相手と見るが、3,4爻の間は人間関係やその環境と見る。PTMで面白いのは爻の間まで反応を指で見ることができることだ。
初爻の下や上爻の上で反応を見ることもあるのも同様だ。