「艮為山」症例1:30代女性

”「動かざること山のごとし」では部下が迷惑”

1年ぶりに来てくれた。
今回は、腹痛と頭痛があると言って。
2週間前に下腹の痛みがあった、しばらくしてそれが上に移動して胃の当たりに違和感を感じる。
食欲はあり便も問題ないので、内科は行っておられない。
月経とかも問題なく、婦人科もこの10年はいってない。
2ヶ月前の職場の検診でも異常を指摘されていない。
頭痛も、最近、仕事が忙しいのか多くなっている。
特に薬は飲んでいない。

問診では有用な情報がなかったので、横になってもらって診察する。
足は乾燥があり、気の流れが弱く疲れもある。
脾経のおくに瘀血もありそうだ。
腹は、下腹に少し塊のようなものを触る。
腸のガスではない。
子宮筋腫のように感じるが、卵巣嚢腫の可能性もある。
これは、婦人科に任せたほうがよさそうだ。
患者さんには婦人科を受診するように伝える。
胃と肝臓はやや虚をやどす。やはり疲れがあるのだろう。
聞くと、仕事がとても忙しいという。
気の流れも弱く停滞している。
忙しさだけでなく、別に何かあるのではないかと、感じた。

そこで、起きて座ってもらいPTM易を行った。
問は「気の流れのわるい原因は?」とした。
すると、「天火同人4爻」、「艮為山4爻」が反応した。
「天火同人」は以前にも書いたように、同僚、仲間、を意味する。
4爻なので、上司の問題だろう。それも直属の上司が可能性として上がる。
患者さんに聞いてみる「上司が問題でないですか?」。
すると、「最近、仕事が忙しくて、上司からのプレッシャーが強い」とおっしゃる。
プレッシャーとはなにか?仕事の量だろうか?納期だろうか?それも、ハラスメントか?
諸々の可能性があるので、更に聞く。
特に「艮為山」は4爻が出ているので、この上司の特徴だと考えた。
「艮為山」は山が2つあるので、どっしりしている、重たい、動かない、止まる、止めるなどの意味が出てくる。
そこで、色々聞いてみた。
まず「艮為山」からイメージして「山のように大きな人」ですかと聞いてみた。
 「違う」とおっしゃる。
つぎに「どっしりして、動かない人ですか?」と聞いてみた。
 「ゴソゴソしてよく動く人」だという、これも違う。
さらに「みんなが進むのを妨害する(止める)人ですか?」と聞いてみた。
 「そんなこともない」と言う。これも違う。
そこで「意見を変えない、頑固な人ですか?」と聞いてみた。
 すると「そうなんです、全く、頑固で、一旦言ったことはかえない」
「今回も仕事がはかどるような提案をしても、いままで通りのやりかたがいいと言って、かえてれない。」「仕事の効率がわるくて、部下が困っている」とおっしゃった。
「艮為山」は精神的に”動かない、融通のきかない”人を意味したのだとわかった。

漢方は、PTMで頭痛やストレス、考えすぎに効く「釣藤散」をえらんで、終了とした。

コメント

●「艮為山」は「艮」の重卦なので、「艮」の意味が強調されて出てくる。止まる、止める、動かない、動じない、偏屈、頑固などの意味がある。私の臨床ではあまり遭遇しない卦だ。

●前にも書いたように、内卦は自分で、外卦は相手(会社では上役のことが多い)とみる。今回は4爻だったので直属の上司とみた。さらに「天火同人」で4爻、かつ「艮為山」でも4爻だったので、これは同一の人を表すものとみた。だから、「艮為山」の象意を順に患者さんに聞いていった。

●漢方の「釣藤散」は一つのことを考えすぎて頭痛や肩こり、不眠がある人に使う。