「火水未済」症例1:40代女性

”別れても済まない養育費”

胸が締め付けられる、動悸がすると言って来院。
別の患者さんからのご紹介の患者さん。
ウチは脳外科、頭痛をやっているのだが、最近は様々な症状の方が来てくれる。

既往歴を聞いても、8月にコロナにかかり治った以外特に変わったものはない。
脈をみても、不正ではない。

そこでいつものように、横になってもらって診ることにした。
足には緊張が少しある。
腹もガスではっていて、腹直筋はやや緊張。
胃の流れもわるい。
さらに、胸につかえを感じる。胸の心臓あたりが喉からつながって重たい。
漢方で有名な「梅核気」ではない。
「なにか、不安なことがありますか?」と聞くと。
「経済的に問題があって、心配で、、、」とおっしゃる。
でも、身なりもしっかりして、上品な方なので、お金に困っているようには見えない。
どうしてだろう?と疑問におもったのでさらに聞くと。
離婚されていて、子供が3人いて、養育費・教育費が大変だという。
前のご主人から養育費は出ているそうだが、十分ではないのだろうか?

そこまで聞けなかったので、起きてもらって座ってもらい、PTM易で「胸が締め付けられる原因は?」ということで聞いてみた。
すると、「火水未済」が反応。
「未済」はまだ終わっていない、済んでいないことを表すので、何が済んでいないのか?と疑問に思う。
離婚しているので、法律的には片付いているはず。
裁判でもなさそうだし、経済的に問題があるのなら”お金の支払が済んでいない?”のではと思いつく。「ひょっとして、養育費を払ってくれてないの?」と聞くと。
「そうなんです、3月前から払ってくれてなくて、どうしようと心配で」と言う。
ご主人は、職業を変えられたようで、新しい住所の連絡もないらしい。
それで不安になって、胸の締めつけ感になったのだとわかった。

漢方でできることはと、PTMでしらべると、疲れとストレスに効く「補中益気湯」が反応したので、これを処方して、今回は終了とした。

コメント

●「火水未済」は、終わってないこと、未完了、未熟、途中、不十分などを意味する。臨床的には、仕事が終わらない、契約がまだ、とかを意味したことがある。

●当ブログのテーマを「未済乾乾」としたのも、「未完成だから努力しよう」という意味でつけました。

●社会的な問題が症状の裏にあると、なかなか漢方では対処しにくいが、「この方に最も必要な薬は?」と意識して、PTMで選んで処方している。