”顔をそむけて体は従う”
頭痛があるので来られた方。
もともと頭痛もちだが最近特に酷いという。
ほぼ毎日頭痛があって、鎮痛剤を連日飲んでいる。
胃も痛くなって、体調不良がある。
仕事のストレスは最近とくに多くなったとおっしゃる。
高血圧が見つかったので内科からはアムロジンが開始された。
疲れもあり、寝ても次の日が起きるのが辛いとおっしゃった。
横になってもらって診察した。
足は緊張がある。肝経から胃経にかけてスネの面に緊張が強い。
冷えはあまりないが、乾燥がある。
腹は腹直筋の緊張がある。食事は取れているようなので栄養はOKだ。
下腹の腎の問題もない。
太淵に接触鍼を当てて全体の気をみると、流れが悪い。
頭が重く、ボーッとした感じがある。
目も重たくショボショボしている。
軽いノボセがある。
総合的に、ストレスと疲れがあるのがわかる。
患者さんの言うように仕事におけるストレスだろう。
大体「証」は取れたので、起きてもらい椅子に座ってもらいPTM易を行った。
問は「気の流れの悪い原因は?」とした。
すると、「地水師」、「沢雷隨」、「火沢睽」が反応した。
話から、ストレスの原因は仕事場にあるのは明らかだ。
これらの3つの卦は仕事環境のことを表しているとおもわれる。
プライベートのことを示唆するような卦ではない。
「地水師」が典型だ。コレは”争い事、仲違い、競い合っている”時に出ることが多い。
とくにグループ間の争いでよく出る。
会社は集団、グループなので、仕事場で皆が争っているのだろうか?
その点を患者さんに聞いてみた。
「仕事場でみんなが、仲が悪いとか、張り合っているとかありませんか?」
「特に仲が悪いわけでないけど、みんなバラバラで、ギスギスして競争している感じがする」とおっしゃった。確かにコレは「師」でいいだろう。
次に「火沢睽」だが、コレはお互いに”背くこと、反目すること”を意味する。
指を動かして爻を追っていくと、4爻で反応したので、恐らくこの方と上司が反目し合っていると予想した。そこで次のように聞いてみた。
「上司とかと、意見や方針があわないことないですか?」
「そうです」と答えが返ってきた。
上司の方針が患者さんが考える事と合わないらしい。
それに対しては、沈黙して反論できないようだ。
上司は会社の権威をバックに自分の意見を押し通すらしい。
組織なので仕方がないともいえる。
最後に「沢雷隨」はどうなるか?
ここまでの流れで、話の筋がみえてきたので患者さんに聞いてみた。
「上司と意見が合わないけど、無理に従ってないですか?」
「そうです。無理に従っている感じです。なんだか媚へつらっているような気がして、それもストレスになっている」
そうなのだ。「随」は”付き従う”ことを意味する。
それがすぎると、”盲目的に”あるいは”媚へつらって”従うことになってしまう。
コレは「随」のマイナスの面が強調された場合だ。
以上から、患者さんの会社のストレス状況が把握できた。
つまり”会社は競争が激しく、その中でこの方は上司の方針と合わないので背きたい、でも組織の中なので従わざるをえず、それがストレス状況を作っている”と判断した。
さて、どうするかだが、漢方はPTMでは炙甘草湯が反応した。これは疲れが今の最大の問題になっていることを意味する。だからまず、疲れに対して治療するのが良いといえるので、炙甘草湯を処方して今回は終了とした。
コメント
●「沢雷隨」は、従う、随従、追随、服従、付いていく、などを意味する。私の臨床ではあまり出ない卦だ。以前、患者さんの家族が亡くなったときに、その方は「阿弥陀如来に従って」大往生だったということで、出たことがある。
●「地水師」は、争い、戦い、競争、などを意味する。私の臨床では頻回に出現する。
●「火沢睽」は、背く、半目、顔を背ける、などの仲が悪い時にでる卦だ。これもそれほど頻回出る卦ではない。以前、会社を辞めようと思っている人で「会社からすでに顔をそむけている」時に出たことがある。