”やりすぎて危ない”
当院には数ヶ月に1回程度、時々来てくれるかた。
今回は右腕のしびれがあるといって来られた。
それも数秒程度で脱力はない。
念の為にCTを撮ったが異常無し。
もともと頚椎ヘルニアで整形にかかったことがあるというので、
首からのしびれの可能性が大きい。
それなら重大な問題でないだろう。
他の症状としては首のこりと、かるい動悸のみ。
内科で見てもらっても異常がなかったらしい。
横になってもらって見せてもらう。
足はむくみが少しあるていど。
また、瘀血も軽度ある。
腰が少し硬い、骨盤の動きが悪い感じがある。
腹は軽度の胸脇苦満がある。
太淵に鍉鍼を当ててさらに奥を見てみると、
どうも患者さんの左の肩の横に重たいエネルギーを感じ入る。
存在感が大きい。
まるで患者さんを押しのけて前に出る感じを受ける。
これはなにか?
輪郭がはっきりしているので人だろう。
そこで聞いてみた。
「だれか、重たい人はいませんか?横に来られると圧迫を感じるような。」
「さあー、いないですが。。」
「家族や親戚、職場、知り合いとかでいないですか?遠くの人でもいいですよ。」
「家族なら、そう言えばお義母さんがすこし、そんな感じをうけます。」
”お義母さん”と患者さんが言った瞬間に気が流れ始めたのでそれで当たりだろう。
お義父さんが亡くなってから、85歳のお義母さんが自分勝手になったようだ。
患者さんの家庭のことにもいろいろ口を出してくるらしい。
すこし困っている。
起きてもらって、さらにPTM易をやってみた。
「お義母さんの問題は?」と聞いてみた。
すると「山水蒙」「火地晋」「沢天夬」などが反応した。
山水蒙は”耄碌”に通じるので、すこし認知がないのか?
「認知とか入っていませんか?」
「はっきりしないけど、同じことを何回も言うようになった。」
85歳なので認知はあると見ていいだろう。
火地晋は”進む”の意味だが、今回は”患者さんを押しのけて前にでる”というふうにとれる。
実際に何にでも口をだして、自分のやりたいようにやるらしい。
しかし、問題は沢天夬だ。
この卦は”決壊、決裂、倒壊”などを意味する。
5陽の上に1陰がのって、進みゆく陽に吹き飛ばされようとしている。
だから進みすぎると危ない。
お義母さんは、認知がはいってブレーキがきかない。
だからすこし抑制をかける人が必要だ。
息子のことは比較的言うことを聞くというので、
患者さんのご主人にお義母さんのブレーキ役になってもらうようにアドバイスした。
今回は抑肝散を処方して終わりとした。
コメント
●「沢天夬」は決壊、決裂、決定、決断、決壊などの意味がある。
●臨床的には「決意する」「決裂する」などででたことがある。
●この卦は多くは危険に直面しているときに出る。あまり良い意味ではでない。これ以上進みすぎると首が飛ぶというイメージが有る。佐久間象山が暗殺されるまえにこの卦がでたというのは有名な話だ。