”ヤルことだらけで身動き取れず”
問題があると時々来られる方。
今回は半年ぶりにこられた。
それまでは調子が良かったらしい。
ところが、11月から年末が迫るにつれて、やらないといけないことが
山積し、考えるばかりで身動きがとれないという。
疲れもあり、焦りもあり、安眠できず、何とかするすべはないかと受診された。
早速よこになってもらい診察した。
あしはむくみ気味で、先端は冷えている。
コレだけ冷えるとシモヤケができるかもしれない。
大腿部から腰にかけて胆経の突っ張りがある。
腰の動きも悪そうだ。
腹をみると、やや膨満していて、食事は十分だ。
体力はある。
下腹に軽い臍下不仁をみとめる。
腎虚があるのか、少し頻尿気味になってきているという。
上腹部には胸脇苦満が少しある。
全体の気のながれをみると、ノボセがある。
頭が重たい。考えすぎの徴候だ。
気の流れはスムーズでない。
診た感じでは、腰から背中にかけて強ばっている。
そうなると、からだの動きがぎこちなくなり、身体が思うようについていかない。
だから焦るようになる。
起きてもらって、PTM易で再度「問題点は何か?」と聞いてみた。
すると、「沢地萃1爻と5爻」と「火雷噬嗑」が反応した。
「沢地萃」は、集まる、集中する、などの意味がある。
この方の場合は単純に”雑用”が集まってきている状態を表すのだろう。
「この「萃」は物が集まる意味ですけど。」と患者さんに言うと。
「そうそう、磁石のように、雑用やら、いろいろな事が、集まってきている」とおっしゃった。磁石のように引き寄せているのは、まさに「沢地萃」の感じを表現している。
もう一つの「火雷噬嗑」は、邪魔、障害、かみ合わせが悪いなどの意味で出ることがおおい。
比喩的には”錆びた歯車のように噛み合わず、スムーズに物事が進まない”ことを表す。
この患者さんの状況を的確にあらわしているように思えた。
「歯車のかみ合わせが悪くて、回らず、ギシギシしていませんか」
「そうです、そう。思うように進まない。」
だから、患者さんの言う通り「萃」と「噬嗑」で問題点が指摘されたことになる。
では、「沢地萃1爻、5爻」は何を意味するのか?
1爻は足元を意味すので、自分の身辺の細々した雑用だろう。それが多くなっている。
また、5爻は外卦なので、自分の外からくる雑用、特に5爻なので仕事で上の方から来る用事だろう。
だから、二重に用事が多くなっていると予想できる。患者さんに聞いてみた。
「身辺の細々した雑用と、仕事上の上司からくる用事の両方がおおくないですか?」
「そう、そうです。自分のことで手一杯なのに、上から仕事を言われている」
いっぱい過ぎて、処理できなくなっている。
でも、「沢地萃」の1爻と5爻が変化すると「震為雷」になる。
「震為雷」は雷が2個なので、振動、動きを意味する。
だから、治療がうまくいくと、停滞状態から抜け出して、物事が動きはじめる可能性が大とみた。
漢方は、冷えに対して「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を、腰のこわばりにたいして「牛車腎気丸」を処方して、今回は終了とした。
コメント
●「沢地萃」は、集まる、集合、収束、寄り集まる、などを意味する。易の本では、良いものが集まるような説明をしているが、実際の臨床では悪いものも集まることが多い。それほど出ない卦だ。
●「火雷噬嗑」は、直接的には”歯の問題”ででることがある。比喩的には上に書いたように、”物事が、引っかかりがあってスムーズに動かない”時に出る。
●この患者さんの場合、「牛車腎気丸」で腰が動き出すと、物事の処理もできるようになる可能性がある。腰のうごきと、スムーズな処理能力はリンクしている。