”肉が蓄まり蓄まって、もう限界”
さて、患者さんは生理痛がひどいので通って来られている方。
婦人科では巨大な子宮筋腫、内膜症、腺筋症があると診断されている。
手術はしたくないのでなんとか漢方で出来ないかということで来られた。
筋腫は巨大でまるで臨月近い妊婦さんのようになっている。
痛みもひどく、月の半分は下腹部の痛みで、苦労する。
経血は多かったり、少なかったりで不安定。
痛みのために、図書館の司書としての仕事も休みがちになる。
さらに、アトピー、喘息、リュウマチ、高血圧も合併している。
だから、内科からも沢山薬がでている。
漢方で約1年近くやっていたのだが、少しは痛みが減ってくれたというが、
期待するほどの効果ではない。
婦人科で定期的にフォローされていて、今回は貧血も進んでいるし、ロキソニンも効かないのなら
そろそろ手術をしたほうがいいと、勧められた。
私も、あまりにも大きな筋腫なので、漢方よりも手術をとった方がいいと思っていたので
その意見に賛成。
でも、患者さんとしては、手術に対して不安がある。
まず、横になってもらって、いつものように診察をした。
足はアトピーがあるので皮膚は血虚かつ瘀血もある。
肝経や腎経には力があるので、体力的には弱っていない。
腹は、筋腫で膨満。筋腫の自己主張がすごい。
治りにくい子宮筋腫は、さわったときに「自己主張」を感じる。
このような筋腫は、素直でないので漢方ではよくならない。
内部に熱もかんじる。経血が出にくくなって溜まりやすいのだろう。
だから痛みがきつい。
喉のイガイガ感もあるが、呼吸は安定している。
喘息は吸入でコントロールされているようにおもう。
全身状態的にはわるくない。手術に十分耐えれると判断した。
患者さんには「手術してもいいんじゃないですか?」
「これ以上、漢方では無理だと思うし。体力はOKですよ」と言った。
患者さんは、「やっぱり心配で、腹腔鏡では無理だといわれて、」「
癒着があると、結構大変だといわれた。。。」とおっしゃった。
そこで、起きてもらってPTM易を行った。臨床的には手術を採るべき状況なので、
「手術したらどうなるか?」と言う問いを立てた。
すると、「山天大畜上爻(6爻)」が反応。
「山天大畜」は、”しっかり制止する、沢山貯める”、という意味がある。
手術に進むのを「制止する」というのは、変だ。なぜなら、もう筋腫は限界にきているし、
手術を受ける病院は神戸で最も信頼できる病院だから。
手術自体に問題が起こるとは考えにくい。
もし、手術に問題があるようなら別の卦、例えば「沢水困」や「坎為水」とかが出るはずだ。
それなら、「沢山貯める」のはどうか?
これは多分、今の状態をいっている。
沢山「筋腫(=肉)」を貯めすぎて限界に来ているのだろう。
だから一番上の上爻(6爻)がでた。
一番上の上爻は、ものごとが限界に来て変化する前によく出る。
ここで、上爻を変じてみると卦は「地天泰」に変わる。
これは、非常にいい卦で、”安泰、健康、健やか、調和”をいみする。
おまけに、「山天大畜」上爻の爻辞がよい「天の衢を何う。亨る。」と。
「自由自在に道が通じる」という意味らしい。
患者さんには以上の内容を説明して、励ました。漢方はPTMで桂枝茯苓丸と桂枝茯苓丸加薏苡仁を選んで処方して、終了とした。
その後、1月半後に来てくれた。手術は無事に終わっていた。腹の傷がまだ少し痛むらしいが、ほかはすべて順調とのことであった。当然、異常な月経痛はなくなっていた。
コメント
●「山天大畜」は、大きく止める、制止する、止められて進めない、沢山貯める、貯蓄するなどの意味がある。私の臨床では、いままでに書いたように「牛肉の食べすぎ」の人によくでる。「大畜」は「大きな家畜」という意味があるからだろうと思っている。
●この症例では「牛肉」ではなく「人間の肉」が出たのには驚いた。この文章を書くまでは気づかなかった。易が面白いのは、その意味するところが、当初わからなくても、後になって気づくことがある点だ。
●「どうなるか?」と未来のことを聞いても、この例のように本卦で現状が出て、之卦で未来の状況がでることがある。これは、以前の症例でも上げた通りだ。
●一般的に、上爻(6爻)は極大に来ているので、変化が間近にあるといえる。それが良い変化になるか、悪い変化になるかは、その卦の意味する所による。