「地風升」症例1:20代女性

”高く昇ると高所がこわい?”

 大学4年の女性。大阪の大学で薬学部に行っている。
当院には、時々来られる方。
今回は、試験前に体調を整えたいと行ってこられた。
少し疲れがあるらしい。
それと寝付きが悪くなっているという。

 横になってもらって、診察した。
足はすこし冷えがある。
血虚気味の皮膚のようにおもえる。
腹はガスがおおい、すこしはっている。
食べれるが、胃の動きは順調ではない。
肝はそれほど疲れていない。
喉がすこしつまり気味で、のぼせて頭がおもい。
試験前なので、考えることが多くてノボセているのだろうか?
気の流れは、それほどよくない。
試験以外に原因があるかもしれない。

そこで、ちなみに、聞いてみた「試験は何の試験?」
  「応用合成化学の試験です。」
「なんか、難しそうだなー、すごいね。」
  「そう、難しくて。なかなかついて行けない」
「でも、薬学が好きなんでしょ?」
  「そう、実験がすきで、薬学部にはいった。」
「スゴイね。」実験がにがてな私としてはスゴイとおもう。

 何が問題なのだろうか?勉強は嫌いでないと言うのに。
そこで起きて座ってもらいPTM易で「何が問題か?」と聞いてみた。
すると「地風升」と「雷山小過」が反応した。
これはどう意味か?すぐにはわからなかった。
「地風升」は”昇る、上がる、昇進する、進級する”などを意味して悪い卦ではない。
通常は”上り調子”の時によく出る卦だ。
でも「問題点」を聞いたので、なにか悪い面があるはずだ。

 まず、周りの人にヨイことがあると、当人にとって妬みが起こることがある
だから聞いてみた。「誰か昇進したとか、評価が上がったとか、周りの人でいいことがない?」。
  でも、「ない」という。
つぎに「あなたの何かが増えたとか、上昇したとかして困ったことはない?」
  これも、「ない」という。
さらに、卒業を「升」ととって「単位が足らなくて、卒業できないということもない?」
  単位は十分に「ある」という。
4年生なので就職に関係することかとおもって、「就職とかで問題はない?」。
  すると、「大学院に進みたいけど、試験が難しいし。。」と答えた。
ここで、2つの卦の意味が了解できた。
「地風升」は”大学院に上がること”、そして「雷山小過」は”すこし荷が重い”と言う事だ。
もうじき、大学院の入試があるので、それが難しいので、それで悩んでいるのだ。
直前の試験より頭を悩ませているのは、大学院入試のことだった。

 でも、「小過」だから、努力すれば突破できるはず。勉強が好きな人なので、もう少し頑張るようにと励ました。
漢方は疲れに対してPTMで「当帰建中湯」を選んで、処方して、終了とした。

コメント

●「地風升」は、上昇、昇進、昇給、高くなる、繁栄する、などの良い意味をもつ。
だから、臨床ではでにくい卦だ。かつて経験したのは「店が上り調子だが、従業員はやめていく」という意味で出たことがあった。

●「雷山小過」は、すこし超過、少しオーバー、少し超える(越える)、時間をこえる、などの意味がある。この卦は他の卦と一緒に出て患者さんの問題点を示してくれる。頻回に出てくる卦だ。臨床で、一番多いのは「食べ過ぎ」として表れる。

●「当帰建中湯」は建中湯類のなかでもよく使う漢方だ。「小建中湯」「黄耆建中湯」に比べて疲れが少ない。とくに女性にいいが、男性でもよく使う。