「地山謙」症例2:40代男性

”金が欲しけりゃ頭を下げろ”

1月ごとに来てくれる患者さん。
3年前に風邪症状で来られ、その後引き続き来られている。
先月はめまいがあったが、それはなくなったという。
出した漢方は効いてくれたようだ、良かった。
今回は、いつもと同じように肩こりと首コリがある。
体調はそれほどわるくないという。

よこになってもらい診察する。
足はすこし内熱がある。
肝経の緊張がある。
腹は胸脇苦満がはっきり出ている。
ストレスがあるのか?
太淵に鍉鍼を当ててみてみると、
胸鎖乳突筋の緊張がめだつ。
胸脇苦満と胸鎖乳突筋の緊張があるときはストレスが多い。
目も重たい。
何のストレスだろう?
「なにかストレスがあるのですか?」
  「春なんで、また企業と契約をしないといけない。」
企業からの注文を受けてコンピューターのしごとをしているらしい。
新しく注文の交渉をしないといけないという。
さらに教えてくれたのは、事務所の改装をして広げることも考えている。
だから銀行に金を借りることも考えているという。
なるほど、いろいろ金策で大変だ。
ストレスの原因はわかったがそれでも気の流れは良くならない。
どうしてだろうか?
大体、原因がわかれば気の流れがよくなるのだが。。。

そこで起きてもらって、投げ算木で易を組み立てた。
問は「気の流れが悪い原因は?」とした。
すると、「地山謙」3爻が反応。
地山謙は、”謙遜、謙譲、謙虚、へりくだり”などを意味する。
そこで次のように考えてみた。
地山謙の3爻は内卦のトップなのでこの方だろう。外卦は相手と見る。
外卦はこの場合は交渉相手の企業や銀行だ。
外卦は坤で受け入れ態勢にある。
ところが、内卦の自分は艮でお高く止まって偉そうにしている。
これは「謙譲の徳」に反する。
この方の問題は、プライドが高すぎて謙虚になれないことなのだ。
この3爻の陽が陰に変化すれば、卦全体が坤為地になり、すべて通るようになる。
プライドを捨てろということだろう。

そこで患者さんには「プライドを捨てて、ここは頭を下げて交渉に望んだらどうですか」と説明した。
すると、今回は十分に納得されたようだった。
最後にストレスに対して柴胡加竜骨牡蠣湯を処方して終了とした。

コメント

●「地山謙」は謙遜、謙譲、謙虚、卑下などを意味する。

●臨床では「上司に対して謙虚でない」、「傲慢なひと」とかの意味で出たことがある。

●内卦は自分で、外卦は相手と見る。内卦のなかでも3爻は外卦に近いので相手に進んでいく部分とみる。するとこの場合は相手に向かっている部分が陽で強すぎる。謙虚になってこの陽を陰に帰るとこの方の金策は成功するだろう。