”謙遜の徳は親の為にならず、自分のため”
月に1回程度来てくれる方。
今回は、割といいとおっしゃる。比較的元気にうごけると。
いつもは、疲れやすくて、気持ちも乗ってこないことが多く、
心療内科で鬱の薬をもらったりしているのだが、
最近は気分も比較的安定しているという。
アクセサリーとハーブのお店をやっているのだが、仕事も忙しくなってきて、
今後やりたいことが多いという。
ボランティア活動も、活動範囲が広がっていて、考えることが多い。
それでも身体は動いているので、わりといいという。
そこで、横になってもらって診察にはいった。
いつも足の方から触診する。
足は少し冷えがある。少し湿り感がある。
胃経には虚はなく悪くない。肝経の流れもマアマアだ。
次に上の腹診にはいる。
腹は、胃のうごきが少し停滞しているので、中に物が溜まりやすい。
肝の上には胸脇苦満がすこしある。
最後に右手の「太淵」の上に接触鍼をあてて全身の気の流れを見る
全体をみると頭が重い感じがある。
肩こり、首コリが強い。気のノボセがある。
頭が重いのは、「忙しくて考えることが多い」からだろうと思ったので、
「そうか?」と聞くと、そうだとおっしゃる。
起きてもらい座ってもらって念のためにPTM易をやってみた。
問いは「頭が重い原因は?」としてみた。
すると、今回は「風火家人」、「地山謙」、「雷山小過」が反応した。
これは、仕事に関する卦の反応ではない。
仕事だったら、人間関係は「天火同人」や「水地比」が、業績なら良い場合は
「地風升」や「雷火豊」、悪いときは「水山蹇」、「沢水困」などが出るはずだ。
「風火家人」は家族のことなのでプライベートのことを示す。
そこで、仕事と絡めて、ひょっとして「ご家族と一緒に仕事していますか?」と聞いてみた。
「違うと」という。
確か、結婚してなかったはずでお母さんがいたと思いだしたので
「お母さんに手伝ってもらっていますか?」と、聞いてみた。
やはり「違うという」。母は全然手伝わないらしい。
そこで「地山謙」は何かと考えた。
「地山謙」は、”謙虚、謙遜、控えめ、へりくだる”、などの意味がある。
通常「謙」の徳は易では高く評価される。したがって、問題点は「謙」の反対の性質だろう。
つまり”傲慢、強欲、目立ちたがり”などの言葉が浮かんだ。
そこで「お母さんは、わりと欲深くないですか?」と失礼なことを聞いてみた。
すると、「そうなです、店の売上をいつも要求するんです。」と答えた。
どうも、母は店を手伝ってはいないのに、売上には興味をしめして、
事あるたびに金をねだるようなのだ。
母はご主人と離婚して、年金もないので、手持ちの金がない。
しかし、目立ちたがりで、格好もつかたがるので、それには金がいる。
だから、娘の仕事が軌道に乗ってきたので、今までに増して金を要求するようになってきた。
それが「雷山小過」なのだ。少しオーバーになってきた。
結局、この方は、仕事以外に母の強欲さに頭を悩ましているのだと理解できた。
すると「謙」はこの方のことを指すのかもしれない。
「謙」が度を越すと”へりくだり”という意味が出てくる。
何れにせよ、「謙虚」と「傲慢」は対になる。
親子で対の関係になっているのが問題だった。
アドバイスは「謙虚すぎるのも良くないので、お母さんには必要な分だけにしたら」となった。
漢方は、考え過ぎにきく「酸棗仁湯」と疲れに効く「当帰建中湯」をPTMで選んで、終了とした。
コメント
●「地山謙」は、上に書いたように、謙虚、謙遜、謙譲、控えめ、へりくだるなどを意味する。私の臨床ではあまり出ない。
「謙」の意味は人の性質に関係するので、実際に解釈する時はこの症例のように反対の性質も考えると良いようだ。易の中では「謙」の徳は高く評価されている。
●「風火家人」はわかりやすい卦で、多くは家族のことを示す。
●「雷山小過」も比較的わかりやすい卦で、少し超過、すぎる、オーバーなどの意味だ。
●私の診察手順は、上のように、まず足から入って、次に腹に移って、右手の「太淵」に接触鍼をして全体の気の流れをみて、調節するようにしている。時間がないので背中は見ない。接触鍼で気の流れを見ていると、背中の悪いところもだいたいわかるようになる。